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[コメント] バニラ・スカイ(2001/米)

原作を先に観たせいか、夢と現実を取り違える不思議な浮遊感はこっちでは味わえなかった。バニラ色の空になんの真実味も感じない。(ってか単にCG嫌いなだけ?)
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







********オリジナル版『オープン・ユア・アイズ』との微妙な違いについて述べています。まだ観てない人、警告したよ!************

基本的にはほとんど同じ作り。後から見たせいかもしれないが、『バニスカ』の方が微妙に丁寧で観る者に分りやすく作ってあったと思う。

最後「目が覚めて」終わることからも判るように、この映画全体が主人公の見ている夢。L.E.社の存在も含め、すべてが絵空事と考えることも可能。その場合主人公(夢を見ている主体)は誰でも構わない、デビッドという名前でなくても構わない、ということになるが、それではあまりにもだし、なんでもアリでも困る。

オーソドックスには、夢の中に出てきたLE社の人が言っていた通り。デビッド(トム・クルーズ)は一度死んだ後、冷凍保存され、同社のベッドの上で寝ながら夢を見続けている。彼の夢は、実際起きていたときに自分が経験した記憶を回想している部分、LE社によって都合よく書き換えられた部分、その上に自分で創り上げている“創作夢”部分、の3部分からなっている。それぞれの部分は交錯し入り組むけど、夢として見ている順序は映画の流れと一緒、という所がミソ。長い眠りから覚める前の直前2時間に見た夢、と考えることも可能だが、そこまで厳密に時間軸にこだわる必要もないだろう。

冒頭の誰もいないNYCについて一言。おそらく、3つの部分のうち、彼の創作夢だと思われるが、起きて活動していた頃にそういう夢を見たことがあったのかもしれない。どちらと考えても支障はないと思う。

精神分析医(カート・ラッセル)の存在はもちろん彼自身が創り上げたものだが、それは自分の見る夢を、自分に都合よくコントロール出来なくなってきた事を意味する。その理由は本質的なこと、つまり本当の自分はお化け顔のままLE社のベッドで寝ているだけだということに、心の奥底では気付いていたからである。(そろそろ150年が経過し、もうすぐ起きなきゃいけないことにも気づいていたかも。)

LE社の人が夢の中に入り込んできたのは、彼の夢がパニックを起こしつつあることに気づき(常にモニターしている)、「うまく修正しますのでもう少し夢を見つづけますか? それとも目を覚まして現実社会に生きることを選びますか?」と言いにきたのだ。映画の中ではうさん臭く描かれていたが、意外に良心的な会社である。もっとも「蓄えがそろそろ底をつきます」とも言ってたので、純粋にビジネス的な観点から言いにきただけかもしれない。だがそれはまた別の話。

で、彼(デビッド)は現実に生きることを選んで終わるので、一見極めて前向きなお話。

しかし、彼が150年の眠りから覚め、現実に生きることを選んだ理由は、映画の中ではいろいろゴタクも言ってたが、決め手は「いまは技術も進んだので、あなたの顔も元に戻りますよ」とLE社の人に言われたから。お化け顔で生きていくことがイヤで冷凍睡眠を選んだのに、その顔のまま生きていく決心がつかずに目を覚ましたのでは、本人ちっとも成長してないじゃん?という気がする。まあ、寝て夢を見ていただけなので成長するわけもないのだが。らむたら氏のおっしゃるように、高所恐怖症は克服した(?)とすれば、それは良しとしよう。

ラスト屋上での空の色が違っていた。オリジ版では1997年のマドリードの、本物の青い空。「バニスカ」はまさにバニラ・スカイ、つまり全天に広がる白い雲に、空の薄い青さが微かに紫がかった陰影をつけている。ただこのバニラ・スカイがまったくのCGだった。LE社の創作したヴァーチャルな空ということだから、映画としてはこちらの解釈の方が正しいのかもしれない。だがデビッドの見ている夢でもあるわけで、それなら実際に見たことのある真っ青な空、でよかったのでは。少なくとも私が、「この空をもう一度自分の目で見たい!」という現実への強い郷愁(変な言い方だが)を感じたのは、オリジ版の抜けるような青空に対してだった。

さらに、主演を張ったトム・クルーズエドゥアルド・ノリエガ。全盛期の頃ならともかく、すでに「33歳という若さ」を感じさせないクルーズでは勝負にならない(実際にトムが33歳だったときは、25歳くらいに見えたものだ)。ノリエガの方が断然ハンサム。化け物顔のメイクもオリジ版のほうがどぎつくて、「バニスカ」版はメリハリのない感じ。

ペネロペちゃんもオリジ版では確固たる意志と生活基盤を持った自立した女性、という感じだったのに、「バニスカ」では不思議な異邦人のネーチャンという感じでしかなく、魅力半減。

ただ「バニスカ」の方で敢えて「表に対する裏」みたいな補完的な作りにしたのだろうが、二つで1セットという感覚がしなくもない。・・・という理由で同じ点数にするのはオリジナル版に対して申し訳ないような気もするが、

80/100(02/05/05記)

(評価:★4)

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