[コメント] 贅沢な骨(2001/日)
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主役級である男女3人以外にほとんど登場人物がおらず、3人の狭い関係性のみで構築された物語世界。ヌードや絡みのシーンは適度に挿入されつつも、濃密なエロスやドロドロとした情念の世界は直截的には描かれず、いかにもさもありなんとした意匠(ミキサーで泳ぐ3匹の金魚、喉に刺さった見えない骨、回り続けるターンテーブルなど)で換喩的にサラリと表現しようという手つき、体裁としては「今風」なロマンポルノといったところ。
不感症の女、潔癖症の女、媒介としての男。性を介した濃密な関係性よりも、稀薄な身体性との齟齬を描くほうが現代的ということなのか、しかし片方には脱がせ片方には脱がせないという覚悟の中途半端さには全く説得力がない。競演する女優二人が派手に脱いで派手に絡んでこそ、にもかかわらず彼女たちが抱えている稀薄な身体性が、温度差としてきわだってくるのではないか。これは個人的な願望で言っているわけではない。決して、決してそうではない。でもつぐみのオパーイは良かった。いやそうじゃなくて。
また、男を媒介にした女2人のプラトニックな愛の物語を描きたかったのか、男女3人の情念がもつれ合う三角関係を描きたかったのか、脚本を書いた監督自身も焦点を絞りきれていないように思えた。あるいはその辺りをあえて曖昧にすることで、ミヤコ(麻生久美子)のサキコ(つぐみ)への愛憎半ばする感情の機微を表現しようとしたのか、否、であれば結末近くの「サキコのことがずっと好きだったの」というあられもない告白など蛇足、野暮のきわみと言うべきだろう。2人に始まり、2人が3人になり、最後は1人で終わる。しかしそれにしても、物語の流れからあまりに浮いたところで取ってつけたように訪れるミヤコの死はいかがなものか。必然性のない悲劇はただの感傷的なメロドラマにすぎない。
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