[コメント] 息子の部屋(2001/仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
親にとっていつもは別段なんの印象ももたらさない普通の息子。
少しの悪さをして、イマドキの若者っぽくとぼけた感じで、 父親にとっては少しイマドキの若者っぽくなっていく様相が少し自分の理解するのが大変になって行く年齢の息子なのである。
そして、そんな普通の風景「息子の部屋」を息子に対して家族はその各々の心の中に作るのである。
そんな時、息子が何の前触れも無く死んでしまう。
それは、今まで自分達の心の中に作っていた、息子の部屋が間違っていたのでは無いか、息子が持っていた息子の部屋とは違うのでは無いか、 更にはあの時の息子への接し方は間違っていたのでは無いか?、 そしてそれは何故あの時、息子が海に行くのを止めずに仕事を優先させてしまったのだろうと言う、どうにもならない後悔の部屋。
ここがどうにも哀しい、時間を戻したくてもどうにも戻す事が出来ないし、 何もかもが自虐的に働いてしまうから、家族にも他人にも冷静でいられないから、 その哀しみが広がってしまう。
それは息子の生前に対する想いがドンドン深くなりすぎて自分の中に持っている息子の部屋だけが大きくなりすぎて、 他の人達に対する部屋も、自分が自分に持っている部屋もどうしようもなく枯渇していってしまうからだ。
そんな哀しい話でもラストは哀しい感じでは無く、許しの様な感覚で終われたから素晴らしかった。
最後に妹が言ったセリフ、「今夜試合にでなくちゃならないのに・・・」と言って家族がちょっと笑うシーン、 もうココ、家族が少し前に進みだして嬉しいやら悲しいやらで、何だか凄くグッときてしまった。
息子が最期に見ていた風景である海と今残された家族が全員で見ている風景の海 が完璧に調和し、紛れも無く息子は自分達と家族であったし、 これからもずっと家族であると全てを邂逅出来た瞬間なのだろうと思いました。
そして各々が息子、家族、他人に対して持っていた部屋も更に大きく、 調和されて広がっていったんだな、と少し安心も出来ました。
死んでも死んだ人は、生きている人の心の中に残り続けています、 と言う良く聞く言葉を、凄く現実的に優しい眼差しで捉えた素晴らしい映画だと思います。
う〜ん、色々と言葉でこの映画の感想連ねてきたけど、言葉にすればするほど、 イマイチこの映画の良さは伝わらないかも知れません・
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