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[コメント] タワーリング・インフェルノ(1974/米)

恐るべき犠牲者の数々。それを余すことなく描きつつ、素直に受け入れられる作品。ここまで観たまんま受け取れる傑作はほとんどありません。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)と並ぶディザスター映画の傑作と言われ、パニック映画の当たり年だった1974年作品の中でも最大のヒット作で1975年全米興行成績2位。

 本作を最初に観たのは小学生の時。テレビでだったが、この映画には痺れた。とにかく格好良い!と言うのがその時の印象。当時は外人の名前なんて全然知らなかったが、あの消防士はとにかく格好良い!と子供心に思ったもの。翌日、同じくこの映画をテレビで観た友達と消防士ごっこを始めたりしたね(良い映画やった時の翌日は大体そう言う遊びになったのだが、私は小学校当時なかなかテレビ見せてもらえなかったので、参加出来る機会が少なかった)。

 それから時が経って、ちょっと前にTVでやったのを録画しておいて拝見。

 やっぱり凄いわ。

 子供心には「格好良い」としか理解出来なかった事が色々と説明出来るようになっていた。

 先ずオールスターキャストの豪華さ。主人公二人がニューマンとマックィーンの二人ってだけでも充分見応えはあるんだが、脇を固めるキャラもそれぞれ主役級ばかり。よくここまで集めたもんだ。

 それに本作は、とにかく気持ちがスカッとする。同じディザスター映画の傑作と言われる『ポセイドン・アドベンチャー』と較べてみると(奇しくも製作はどちらもアーウィン=アレン)、大きな違いは、同じく理不尽な事故を前にしても、割り切り方が全然違っている。  本作の場合、キャラクタにほとんど過去が語られていない。それで心を介入させる事を極力抑えた結果、プロフェッショナルの仕事というのが見えてくる。『ポセイドン・アドベンチャー』の場合、自分の身が危険だから必死になってるのだが、本作の場合、自分自身は外で逃げてしまっても良い立場にある二人が主人公になっている。彼らを駆り立てているのはどちらも責任感である。ニューマン演じるダグの場合、自分が設計したという責任があるし、マックィーン演じるマイケルの場合、消防士としての責任感から危険な任務に飛び込んでいく。自分がなすべき事をきっちりとなす。これがプロってものだ。この点がきれいな割り切り方になっていて、観ていてとても心地が良い。

 そしてもう一つ重要なのが、この事故を引き起こした張本人がビルの中にいる。という事実。

 仕事上よく「あいつら無茶ばっか言いやがって。一回でも現場で苦労してみろ」と上司に対して愚痴の言い合いがよく起こる。これは本来責任を取るべき人が現場に不在だから起こる事だが、そいつらが本当に現場にいて、パニックを起こしていると言う事実に、意地悪い見方で喝采を送れる。「あいつらもこうなって欲しい」とちょっとだけ本当に思ったり…(しかしこういう人間ってみんな見苦しく生き続けようとするんだよな。そこがちょっとむかつくんだが)

 ラスト、より多くの人を救うためタンクを爆破。この結果水に押し流されて更に何人かの人が死んでしまう訳だが、これも又、リアリティに溢れていて、決してきれい事に陥らない所も好感度高い。人を殺さずに済まそうなどとは、本作ではあってはならないのだ。

 それらを含め、観たまんま受け取ればいいので、とてもスカッとする作品として仕上げられてる。素晴らしい。

 最近ではあまり珍しくなくなっているが、本作はWBと20世紀フォックスの共同製作と言う事でも話題を呼んだ。実はこれはディザスター映画流行りでWBが『Glass Inferno』という作品を、20世紀フォックスが『The Tower』という映画を製作決定した所に端を発する。同じ題材の映画の競作になりかけたが、アーウィン=アレンが仲介し、共同製作することで話が付いたのだという。この豪華キャストもこのお陰。それで題は二つの作品を組み合わせたものとなっている。

(評価:★5)

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