[コメント] タワーリング・インフェルノ(1974/米)
9.11後の眼からすると甘さはあるが、それでも来るべき世紀の不吉なヴィジョンを先取りしていた。何か悪いことが起きそうだ、という1970年代アメリカ特有の空気感は的中した。ミニチュアのグラスタワーを仰角で映すカットが前衛芸術のごとき不気味さでコワイ。
でも、いまの私たちは知っている。この映画は黒煙の描写が不足していることを。もっと凶々しい色と、見る人を震撼させる量と勢いでそれは描かれないといけないのだと。さらに言えば、「悪」のスケールも足りない。1970年代はこんなのを「悪」と考えていたのである。「ヒューマニズムだの市民感覚だのを一顧だにしないニヒリズム」とか、「違う文明系に属する対話不可能性」とかは全然ないのである。
おもえば1970年代は牧歌的だった。いま私たちはとんでもない時代に生きているんだなと、この映画を観て改めて思ってしまった。
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