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[コメント] モンスターズ・インク(2001/米)

モンスターは怖いです、モンスターだから。ディズニー嘘つかないように。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







モンスターは怖い。理由はない。だって怖くなかったらモンスターじゃないから。まず自分達の視点があって、それに対して怖いものとしてモンスターという概念が発生する。怖くないならそもそもモンスターじゃありません。

そのお約束を取っ払ってわざわざモンスターを主役に据えた上で、本当は「モンスター」なんてどこにもいないよとばかりに、モンスターを人間と同じ視点で描く。そして人間の子供を逆にモンスターに見立て(っていう説を拝見し納得)、その上でモンスター達(人間)にこう言わせる。「人間(モンスター)なんて本当は無害なんだ」 二重三重に工夫された恐ろしいばかりの全方位平和空間。

奴らこう言ってるよ。モンスターも人間と同じなんだとさ。でもってモンスターにとってのモンスターは人間だけど、やっぱり人間も無害なんだとさ。この世のどこにもモンスターなんていないんだとさ。みんなみんな良い奴なんだとさ。

何か勘違いしてないか? 世の中全員優しい人じゃなきゃいかんとでも思ってるのか? 世界は必ず平和にならなければならないとでも思ってるのか? 優しい人もいれば冷たい人もいる。争いもあれば平和もある。人間もいればモンスターもいる(?)。人間ってのは争うように出来てるんだよ。みんなそれぞれの考えがあるんだから、仲良い時もあれば仲悪い時もある。譲れないものがあれば戦いも起きる。愛情の対象を作るのと同様に敵意の対象も作ろうとするのが人間なんだよ。

現に見てみろ、全員良い人、どこにもモンスターのいないこの映画にも、ちゃんと悪役がいたではないか。モンスターは良い奴、人間も良い奴、みんなみんな良い奴。世界は笑いで満たされる。でもちゃーんと倒す為に用意された悪役がいて、みんながハッピーエンドの中で一人散々な目に遭わされていたではないか。

「皆を怖がらせるモンスター」はどこにもいなくても、「皆でやっつける悪役」だけはちゃっかり用意してある。こういうのが一番性質が悪い。これがディズニーだ。というかアメリカそのものだね。今この言葉を使わずしていつ使うのか、「ご都合主義」。

おまえらそうやって、みんな良い人、みんな仲良し、世界はいつも平和、ってやりながら、その為の生贄をいつも血祭りに挙げてんだろうが! な〜にが平和だ! なにが優しさだ! むしろお前ら一番モンスターじゃねえか。誰か倒したいんだろう? 戦いたいんだろう? 堂々とそう言ってみろってんだ。

俺はこんな自分勝手な優しさを優しさとは認めない。こんなものを「素直に楽しむ心」なんて持ち合わせていない。こんなもので息抜きするぐらいなら、倒れるまで突っ走ってやる。どんなに下らない現実逃避だって、それなりのこだわりをもって逃避するのが人間ってもんです。こんな性質の悪い逃避はやっても全然楽しくない。楽しみたいとも思わない。

(評価:★2)

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