[コメント] ビューティフル・マインド(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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評価されるだけのことはある。驚くほど完成度が高いので、もはや非の打ち所が無い。だが、典型的なハリウッド的感動作のスタイルであり、実話ベースでいかにもアカデミー賞向きといった要素から、"賞取り映画"として嫌う人も少なからずいることだろう。自分も前半多少感じたが、所詮頭の良い人の話と端から敬遠する人もいるかもしれない。『グリーンマイル』が公開された時、自分も作品は良かったとは云えど、いかにもといった感じから少し敬遠した部分がある。しかし、この映画はそういったこと以上に内容に惹かれた。
この物語で心に響いたのは、ナッシュの妻アリシアの存在だ。精神分裂症で苦悩する夫を見守る姿が実に力強い。例え愛があったとしても、重病の夫を見捨ててしまう妻もいることだろう。だが、彼女は耐えて耐えて続ける(実際には一度離婚してその後再婚したらしいが、この映画のテーマを考えるとあくまで妻でい続けることが良かったと思う)。適所適所で与える彼女の夫へのアドバイスの一言一言に重みを感じられる。ナッシュ一人だけでは幻覚から開放されて前向きになることは出来なかったかもしれないし、強い女であった妻アリシアの努力が薬となったはずだ。ノーベル賞でのナッシュのスピーチがそれを物語っている(実際にはノーベル賞授賞式ではスピーチなどなく、劇中のスピーチはナッシュが妻への想いを語った際の言葉のようだが、映画の主題を考えるとハリウッドらしい手法とは言え、あのスピーチで締めたことは正解だろう)。この夫婦を見ていると、愛の深さを感じさせられる。宇宙と同じように愛は無限なのだろう。
前で述べたように、妻アリシアの存在がこの映画ではかなり大きなポイントなのだが、演じるジェニファー・コネリーも素晴らしい。彼女の名演技無くしては、この映画は成立しないだろう。今までどちらかと言えば実力はあるが目立つことなかった彼女だが、今回この作品で注目されたのを見ると本当に嬉しい限りだ。この映画では彼女以外考えられないくらいの適役に思えたので、是非オスカーの授賞式で微笑む姿を見たいです。また、ラッセル・クロウも素晴らしい。『インサイダー』、『グラディエター』、そしてこの映画でも、どれもまったく違った雰囲気で演じ、演技自体が文句なしに良い。一歩間違えるとナッシュの役はやり過ぎ、オーバー過ぎということになり兼ねない役柄だが、彼はうまく抑えて自然に演じていた。オーバーアクションを見せられたとしたらまったく悲惨だっただろう。なんだかんだスキャンダルの多い彼なので、悔しい気もするけど彼はすごい俳優なんだと実感させられた。
主題は夫婦の愛だが、サスペンス色ありの、悲痛な精神分裂症描写ありの、136分間のバランスが非常に良い。中盤のエド・ハリスが出てくるあたりは、幻覚だなんてわからないから緊迫感あるし、その後の精神分裂症の治療を見ていると、その悲惨さから悲しみが大きくなる。ショック療法のシーンは同じくジェニファー・コネリー出演の『レクイエム・フォー・ドリーム』のような悲惨さを感じた。この波乱万丈から最後はきっちりさわやかな感動へと持っていくロン・ハワードの手腕はさすがです。彼の作品では『バックドラフト』と並んで、この映画は自分のお気に入りになるでしょう。
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