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[コメント] ターミネーター2(1991/米)

不死の敵との対峙も、「機械」との「愛」の構築も「プログラム=運命」の破綻因子=エラー=人間による戦いであるというコンセプトの軸はやはり熱い。機械と人を分かつもののテーマをもっと掘り下げて欲しいと思いつつ、ただのプログラムから「父」と化す満身創痍のシュワはやはり泣かせる。しかし、機械とヒトの接近において、ロバート・パトリックの造形を介して、おぞましさも併置される演出が面白い。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







(前作、『エイリアン2』、『ターミネーター3』のネタバレあります)

「父」の定義を軽率にしてはいけないと思うし、ジョンにはれっきとした人間の父がいるので、短絡化してはいけないとは思いつつ、やはりシュワは護り手としての「父」として描かれていると解釈することに、それほどの不自然はないと思う。ただ、どのような経緯が彼を「父」であるに至らしめたかを重要な問題にしたい。

彼が「ジョンを護る」という「プログラム」であることを貫徹したが故に彼が「父」となり、未来がもたらされたのか。つまり「人間性」もまたプログラムなのか。

あるいは「プログラム」であることを超越して、つまり「エラー」として「父」になったが故に、運命に破綻=未来をもたらしたのか。

実はグレーなところである(これはシュワが大根であり、冒頭と終幕で明確に演じ分けていないが故に生まれるグレー感だ。前作にしても、この大根シュワは素晴らしいと思います)。ロマンティックな見方ではあるが、やはりここは後者の見方で在りたいと思う。「人」とは「エラー」であり、「エラー」であるからこそ破滅の未来も、希望の未来も創造することが出来るのだと。運命は固定のものではなく、エラーの連続なのだと。

ところで、前作は人間が機械に模倣されることを頑なに拒むことで人間性を謳った映画だったが、今回、「模倣」は否定しつつ、「手を取り接近する」ことは否定していない。多くの「熱い・あたたかい」カットは大体このコンセプトで撮られていると思う。

一方、一切表情を動かさないT−1000ロバート・パトリックは、あくまでプログラムであることを貫徹することでシュワとの対比を示している。T3で登場するT−Xの「無表情」には「感情」の萌芽のようなものが認められる(ただ役者が大根なだけかもしれないが、便器でブン殴られた際にちょっとムッとしているように見える。結構可愛い)が、パトリックにはこれすらない。

そして、それらを全て覆すようなラストの断末魔、唯一見せる「表情」は衝撃度が高い。「恐怖」という「感情」なしには作り出せない表情だからだ。T−1000のヒトとしての擬態機能は容姿や声のみに限定され「感情」は排されていたことから鑑みれば、ここで何が起こっているかは明白だろう。これもまたおそらく「エラー」である。「恐怖」は生存の基本的な要件でもある。彼は「エラー」により一層「人間らしく」なったということだ。

機械とヒトの接近において、あたたかさとおぞましさが両立されるストーリー。やはり改めて観ても面白いと思う。

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闘士・戦士としての女性を描くことについては、今やタランティーノが上を行ってしまった感があるが、それでも髪振り乱して戦うハミルトンの描き方は流石だ。(一方で『エイリアン2』のバスクェス上等兵役のジェニット・ゴールドスタインが、ただのおばちゃん役で登場し、T1000にあっけなく串刺しにされてしまうのがちょっと面白いです)前作のイモ姉ちゃん(イモは間違いないがよく見ると可愛い気がする)ぶりも良かったが、前作ラストを踏み台にした闘士としての立ち居がいい。収容所脱出シークエンスが一番いいかな。ちょっとファナティックな役作りもとてもいい。

ハミルトンはキャメロンお得意の戦う母であるが、護り手としての重要な役目はシュワルツェネッガーが専ら負っている。もちろん「父」としてマイケル・ビーンがいるわけなので、当事者の心情はいろいろ複雑であろうし、、この心情を考えるのも一興。なお、キャメロンが父を描くのは割と珍しいケース。機械が漢になるという意味では『エイリアン2』のビショップ(ランス・ヘンリクセン)もそうだが、キャメロンは何かテーマ的なこだわりがあるんでしょうかね。

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(些末なこと)

T−1000役は前作で没になったというヘンリクセンによるものが本当は観たかったが、これはこれで悪くない。また、状況説明が鈍臭いが、キャメロンらしい愛嬌として愛でたい。あと、これアクション映画におけるショットガンフェチにはたまらない映画ですね。

(評価:★4)

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