コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 害虫(2002/日)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
たかやまひろふみ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画であおいタンが演じるのは48ある萌え属性の一つ、「不機嫌美少女」と呼ばれるものです。凡庸な世間を軽蔑し、かと言って「オレの歌を聴け!」とシャウトする熱気バサラは持ち合わせていない。ただ周囲と距離を置き、冷たく見つめる少女。彼女が心を許すのは文通を続ける小学校時代の教師(田辺誠一)と街で出会ったプーの青年(沢木哲)、あとオマケで白痴のオッサン(石川浩司)のみです。彼ら以外の人間はことごとく俗で卑しく、特に男性は一方通行の欲望をぶつけてくるダニ野郎として描かれます。あおいタンを理解した上でその幼さ、危うさを指摘してやる大人は誰一人として登場しません。「お前のセカイではお前だけが哀しくて、お前だけが被害者なんだな」と言ってのける路上のカリスマは望むべくもありません。

改めて言うまでもなく、この映画はあおいタンを救う気など更々ありません。むしろ彼女を追い詰め谷底に突き落とすことを最終的な目標としています。それなのに田辺誠一や沢木哲のようなキャラクターを配置することで、あおいタンに寄り添う「素振り」をしているのです。ここら辺がつくづくヤラシイなーと思うのです。塩田はん、あなた「大人は判ってくれない」とか「パックランドで捕まえて」とか言うてますけど、それは対外的なポーズでっしゃろ。本当は落ちていくあおいタンを「もう少し見ていたかったのかもしれん」てことでっしゃろと、突っ込みたくなるのです。

こういう映画はねえ、いくない!まったくロクなもんじゃないと思うんですよ。でも救い難いことに、悦びを見出してしまう自分がいるのも事実なのです。たとえば火炎瓶を嬉々として製造するあおいタンとか、ビジュアルだけでもワクテカしちゃうんですよ。もう理屈じゃないんですよ。身体が勝手に反応しちまうんですよ。分かります…?興奮してるんですよ…!興奮してんの…!もっと直角になりたい…!

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)ペンクロフ[*] MSRkb[*] disjunctive[*] てれぐのしす

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。