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[コメント] ハッシュ!(2001/日)

抱きかかえようとしても暴れて引っ掻く野良猫のような朝子。にじり寄るような、距離の縮めかた。相手の背中に、ぎこちなく伸びたその手。互いを労わりあう三匹の野良猫。(02.06.21@梅田ガーデンシネマ)<追記>秦野さくらさんへ→
movableinferno

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







<追記1>

秦野さんが(追記)で触れておられた場面のこと、わたしはこんなふうに読み取りました…

「父親になれる目をしてる、と思った。」→飽くまでも勝裕の人柄を見込んだ、のであって、彼がゲイだから自分の子供の父親に選んだわけではない。

「恋人って、一緒に蕎麦食べてたひとだよね?」→あなたがゲイで、恋人がいるということもわかってる。恋愛や結婚を求めているわけではない、ということを伝えたかった。

反論というわけではなくて、こんなふうに観た人間もいる…ということで、お伝えしておきます。

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<追記2>

秦野さん、お返事ありがとうございます。

わたしは、朝子のことをとっても好きになりました。だから、上に書いてあるようなことは「朝子のことが好きな人間の眼で観た」というバイアスがかかっています。 朝子の本当の気持ちは朝子に聞いてみないとわかりませんね。もしかすると最初は「ゲイカップルだから」というある種の打算のようなものがあったのかもしれません。

秦野さんが(追記2)で触れておられるあの場面のこと、わたしはコメントに書いたように、まるで三匹の野良猫がぎこちなく互いを労わりあっているように思えました。だから「ああ、そういう観方もあるのだな」と思いましたけれど、その心情はわからなくもないです。泰野さんは勝裕と直也というカップルのことをとても好きになって、とても大切に思われたんじゃないかなあ、と思います。大好きな友達カップルを見つめるように、ふたりがふたりだけで固く結ばれていることを大切に守りたいような気持ちが生まれたんじゃないかなあ、と想像しました。(全然見当違いだったらお恥ずかしい)

それにしてもジェンダーと、それにまつわる問題は本当にむずかしいものだと思います。 身体は男でも心が女だったり、身体は女でも心は男だったりする人がいる、ということは、今ではわりと理解されやすくなりましたが、 では、愛し合う者同士は常に「オンナ」と「オトコ」という二つの性的役割を担うことが必然なのか、とか、 個人と個人が性愛を介さずに結ばれ、家族を作ることは不可能なのか、とか、 お父さんが二人でお母さんが一人じゃいけないの?とか、 じゃあ僕がお母さんで彼がお父さんで彼女もお父さんで子供を育てちゃダメなの?とか、 よくわからないことがいっぱいあります。少なくともわたしにはよくわからない。YESかNOか、と言われても選べないことばかりです。

「好きな人とはセックスするのが当たり前じゃん。」とか「やっぱり子供にはお父さん(お母さん)が必要だよ。」とか「愛し合う者同士が結ばれて、その結晶として子供が生まれる。そういう神秘的なことを人間の手で好き勝手しちゃいけないんだよね。」なんて思いながら、 「愛って別にセックスだけじゃないじゃん。」とか「両親揃ってたって寂しい子供はいるよな。」とか「男女が結婚して子供を作ること以外にも家族の作り方はあるんじゃないか。」なんて思ったりもする。その両方が正直な気持ちであると同時に「それがほんとうに正しいことなの?」と聞かれるととたんに自信がなくなってしまうようなあやふやなものでもあります。

だんだん、一体何が言いたいのかわからなくなってきましたが…(トホホ)ただひとつ言えることは「本人が幸せかどうか」だけを見極めなくてはいけない、ということではないかと思います。なんだかよくわからないことばかりだけれど、よくわからないからこそ自分の気持ちには正直にならなくちゃいけないし、他人の気持ちを無視して「普通」という枠の中に閉じ込めちゃいけない。あまりにも当たり前なことしか言えなくて、今、これを書きながら自分でも呆れていますが、やっぱりそれは大切なことで、はっきりと言えることはこれしかない、とも思います。

この映画は、そんなことを考えるきっかけをくれました。くりかえす日々の中では改めて考えるようなこともない、でもけっこう大切なこと。それをこれだけまじめになって考えたのはきっとあの三人のことをとても好きになったからで、そんな人たちが棲んでいるこの映画のことは、やっぱりとても好きだなあ、と改めて思いました。

なんだかうまく対話になっていないのですが、秦野さんにお返事をいただいたことが自分なりにいろいろ考えるきっかけになって面白かったし、この映画に対する愛着も増しました。どうもありがとう。

(評価:★4)

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