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[コメント] スパイダーマン(2002/米)

葛藤するヒーロー。そして描かれなかった葛藤。
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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惜しい。惜しいのだ。もうちょっとで4点つけてたはずなのに。ビルからビルへ飛び移る映像はジェットコースターみたいだったし、ドラマもなかなか盛り込まれていて、誉める要素はたくさんあったのに。

ところが、この映画は長くてだれる。もうすこし短くすれば、引き締まった内容になったはずなんだかなあ。

そして、最大の不満が、デフォーの扱い。研究費の問題から、追い詰められる形で人体実験をし、苦しみながらもう一つの人格に操られる羽目になる。見ていて、あまりにもかわいそうだ。感想としては、同じく、人体実験から怪物に変身してしまう『ザ・フライ』に近い(グロい描写はないけど)。しかも、脇役だからか、葛藤の描き方が、あまりにもお粗末だ。スパイダーマンの持つ暗さが、ドラマとして消化できるのに対して、グリーンゴブリンはただ気分が滅入るだけだ。

鏡の前での演技には拍手ものなのだが、やっぱり嫌々ながら悪者になるんじゃなくて、積極的に悪に走ったほうがよかったなあ。鏡の演技は捨てがたいから、二重人格という要素は残して、そのかわり、もう一つの人格に操られるのではなく、その人格を積極的に利用するというのはどうだ。偶然手に入れた強大な力を善に使う者(スパイダーマン)と悪に使う者(グリーンゴブリン)」という対比が成り立って、よかったと思うぞ。

そして、スパイダーマンの葛藤も、非常に重要なものが抜けている。戦いの決着だ。グリーンゴブリンの正体がデフォーと知ったとき、スパイダーマンは、ほとんど迷うことなく倒してしまう。なんでこうもあっさりと結論を下せるのだ?そりゃ冷静に考えれば、倒すのが正しいのかもしれんが、どうして冷静でいられる?葛藤するヒーローがテーマなんだから、やっぱりここは迷うべきだろう。

スパイダーマンは、自分の手でとどめを刺したわけではない。グリーンゴブリンの攻撃をよけたのが、結果的にそうなったのだ。だから、あれは反射神経によるものかもしれない。でも、それならそれで、何も考えずによけた自分を責めるはずではないのか。

グリーンゴブリンの葛藤を、もっと丁寧に描いて欲しかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)カルヤ[*] はしぼそがらす[*] TAKAどぅ〜[*]

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