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[コメント] スパイダーマン(2002/米)

大ヒットしている理由が分からん。だってサム・ライミなんだぜ
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







“I am Spiderman !!”

初鑑賞の私も一緒に言えてしまったぞ(思わずガッツポーズ。本当は立ち上がって拳を突き上げて叫びたかったくらいだ)。

理由はハム様がご指摘の通りだが、何もラストばかりではない。この映画の根底そのものに名作『ダークマン』が流れている。やってることは同じ(でもないか?)でもメジャーなヒーローを扱っただけでこうも世間の対応が違うものなのか。

アメコミ風オープニングと懐かしのアニメテーマソング(涙もの!)でサンドイッチし「これはマンガですよ」と宣言しつつも、描いたのは反ハリウッド的ヒーロー像。侍Meというふざけた名前とその作品群等々から(一部マニアを除いて)評価の低い監督※が、世間の期待を意図的に茶化してると思うのは勘繰りすぎか?

※(ちょっとした文献の監督一覧等でティム・バートンジョン・ウーの名前があってもサムの名前があることは少ない)

たいがい宣伝コピーは「何だそりゃ!?」的な物が多いのだが、「運命を受け入れろ」という本作のコピーは言い得て妙。ヒューマン・スパイダーだのナンだのカンだの「スパイダーマンなんて言うなよぉぉ」みたいなことを散々言っていた上でのラスト。彼はスパイダーマンとして生きていく「運命」をやっとラストで受け入れたのだ。彼は特殊な能力によって何も得ることはなく、むしろ総てを失うことになる。愛する者はおろか、親友さえも敵にまわしてしまうのだ(それを続編の伏線なんて言うなよぉ。そうかもしれないけど)。 愛する者を失った悲しみ、愛する者を守るため、そんな私事の動機で戦っていた若者が、総ての人間的しがらみを捨てて孤高のヒーローへ成長するラストだ。そう考えればこの映画は、一人のヒーローが誕生するまでの物語=序章にすぎない。

考えてみれば、彼はヒーローとなるべくして生まれた人間ではない。特殊な能力に気づけば「ヒャッホー!」とか言いながら楽しんじゃうし、幼なじみに恋し(嗚呼!惚れた女が都会の片隅でくすぶっている姿を見る悲しさよ)、能力で賞金稼ぎを目論み(それも彼女をゲットするための車欲しさで)、意地悪な興業主には意地悪仕返し、ちょっとは目立ちたい(写真で生活資金稼いでますって説明かもしれないが)、いたって普通のただの若者なのだ。英雄気取りで街の悪人を倒しても最後の死闘まで大きな壁にぶちあたってはいない(だから大げさに悩むことも無い)。大きな力に伴う「責任」に本当に気付くのは死闘(それも自発的に戦いに挑むのではなく常に受け身だ)の後、ラストになってからだ(そしてその代償は大きい)。

だからこの映画に爽快感はない。超人的な英雄が表面上悩んだり傷ついたりして観客に歩み寄ることで共感を得て観客は英雄気分で映画館を後にする、といった類のアクション映画とは逆のベクトルを向いているからだ。何故だ?何を期待してみんな劇場に足を運ぶのだ?だってサム・ライミなんだよ。移動する目線カメラを期待しているのか?大胆なオーバーラップによる時間経過(省略法)を楽しみにしているのか?(私はそうだ。)そして彼の特徴でもあるこの笑っちゃうくらい大胆な省略法によって、私がこのレビューで連綿と綴ってきた物語も大胆に省略されてしまっているのだ(笑っちゃうぜ)。これこそB級の雄サムの仕掛けた罠。蜘蛛の糸。

だが復調の兆しが見えたとはいえ、まだまだサムの完全復活とは言えない。これは序章だ。序の口だ。『ダークマン』には遠く及ばないと言ってもよかろう。続編ではもっとおバカになっているか、もっとダークになっているか期待したいところだ(スパイダーマンがほとんど出てこないなんてのも面白そうだ)。

最後に余計な話だが、『バットマン』との関係でティム・バートンと比べられることが多くなってしまったサムだが、私はジョン・カーペンターの方が近いと思うがね。

(評価:★4)

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