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[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)

人間は恐れる、もがく、苦しむ、怒る、悲しむ、喜ぶ。人間は顔を持つ。私は人間。私は顔を持つ。鬼には顔がない。鬼は感情を乱されない。鬼は人間ではない。鬼は私ではない。鬼でいることはなんて楽なのか。そこに私がいないのだから。
ろびんますく

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そう。鬼でいるのは楽だ。本当に人間が鬼になれるのなら。

しかし、人間は鬼にはなれない。無表情を装って人を殺すことはできる。でも、それはあくまでふり。実際には、恐怖に震えながら殺す「人間」、怒りに任せ殺す「人間」、楽しみながら殺す「人間」が、そこにいる。そこには、確実に、私がいる。表情と(何らかの)感情を持った、私がいる。

人間の手に負えない戦争という魔物によって人間が狂気に追いやられる(鬼になれる)としたら、人間にとってこれほど楽なことはない。

しかし、それはまやかしだ。たとえ銃を頭に突き付けられたとしても、たとえどんな極限の状態に立たされたとしても、私は人間であることから逃れられない。戦後、戦時中の体験を語りたがらぬ人、さらには戦時中のトラウマから治癒されない多くの人の存在は、まさに、この人たちが戦時中も人間であったことの他ならぬ証だ。鬼なんて本当はどこにもいない。いるのは人間である私とあなたである。

この映画に希望はない。ただこの圧倒的な力を持った映画を世に送り込んだ中国人と日本人の(「協力」「競演」なんて言葉じゃ言い表せないような)本気の真摯な殴り合いに私は希望を抱く。たとえ、彼らが日中両国における腐敗分子であるとしても。

(評価:★5)

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