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[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)

凄すぎて批評なんてできない。できるのはただ、この映画を観て感じて何かを学ぼうとすること。一人でも多くの日本人、中国人、世界の人々に鑑賞されることを願って止まない。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







以前から絶対観ようと思っていた本作、首相の靖国参拝やら瀋陽総領事館事件で日中関係がややぎくしゃくしている本日2002年5月12日、ようやく鑑賞しました。

期待に違わぬ凄い映画でした。エンドロールの時点から、脳の奥の方が揺さぶられて全身に軽い痺れが回っているみたいな状態が続いてます。まともな文章など書けそうにないけど、余韻が残っているうちにレビュー書いておきます。

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日中関係云々と書いたけど、いわゆる”残念な過去”については思っていたほど痛切には突きつけられなかった。前半で馬鹿日本兵の二人組が鶏にありつこうと村民を「ちゃんころ」呼ばわりしていた場面には胸の痛みを感じたが。それよりも、もっと普遍的な、人間の本質、現実の酷さを見せつけられたとの思いのほうが強い。

あの隊長の行動は理性的なものだったのか?狂気だったのか?彼は終戦の詔勅が下りていることを知っていたはず。なのに何故、村民を殺す?村を焼く?海軍の指揮官を煽って、なついていた子供まで殺させる?一旦は処刑しろと言ったはずの花屋が自害を試みると制止する?狂っていたとしか思えない。けれども一方で、あの状況では合理的な行動だったような気もする。とても僕の頭の中では整理できない!

マーの首をはねる役回りを受けたのが花屋とは、何たる皮肉。マーはいつでも花屋を殺すことができる立場にあった。村の仲間から汚れ役を押し付けられながらも、何度も拒否していたのに。心通い合って、笑い合った時もあったのに。戦争が終わり、国の立場は逆転したはずなのに。何で花屋がマーの首をはねるんだ?

斬首の直前、花屋の手はマーの首の蟻を払う。人間の首ははねることができるのに、蟻は殺さないのか?

首だけになったマーの目に映った光景はモノクロではなかった。そう、我々の生活している現代と全く同じく、ちゃんと色を持った、紛れもない現実なんだ、これは!

前半、村民と花屋の通訳を介してのやり取り、映画の中の人々は真剣なのに、とてもユーモラスで映画館中からクスクスと笑い声が漏れていた。ラスト、斬首の場面、観衆が壁の上から転げ落ちたり豚が暴れ出したりして映画の中では皆大笑いしている。だけど、もはや観ている我々の側には笑いは起こらない。スクリーンの向こう側から、「おまえ等の生きている現実と、我々の生きている現実は全く違うもの。だけど、こういう過去の歴史があって、おまえ等の現代の生活があるんだよ」って言われているような気がした。

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とにかく、中国の映画人が日本の俳優と力を合わせて、こんな映画を作ってくれたことに感謝。検定済みの歴史教科書で授業受けるより、この映画観た方がよっぽどためになる。一人でも多くの日本人、中国人、世界の人々に鑑賞されることを願って止まない。

(評価:★5)

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