[コメント] 活きる(1994/香港=中国)
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博打で失った家を奪ったニー・ダーホンは地主階級だというので革命後に粛清され、人民軍に残ったグォ・タォは出世した後に走資派だというので毛沢東時代に粛清される。何という世の移り変わりの儚さ。これが十年刻みだと映画は強調する。グォ・ヨウが生き残ったのは皮肉な目で見れば、ぐうたらで出世に係ることは何も出来なかったからだ。ラストで食卓を囲む脚の悪い義理の息子チアン・ウーだって、造反派なんだから毛時代が終わったらどうなるのか知れないのだろう。だから穏やかげなラストも何も終わっていない。
子供ふたりを失う展開はメロドラマのものだが、友達に引き殺されたり、医師が饅頭食い過ぎて死んじゃうみたいな挿話は、時代のバカバカしさに唖然としているというニュアンスに重きが置かれているんだろう。グォ・ヨウもコン・リーも、メロドラマなら終盤に準備しているだろう果実を何も貰えないで、ただ黙ったまましょぼくれて老いている。最後にもう一度演じられるかなと期待した影絵も顧みられず、箱はだた孫の小鳥の入れ物になったという詠嘆。
影絵の幕が突然切り裂かれるショットや、革命軍到来の禍々しい件など、要点が的確に示される撮影は見事なもの。私的ベストショットは口のきけない娘のフォンシアが嫁ぎ先へ去る件で、両親を顧みて自転車の荷台から地面へすっと降りるショット。ここは泣かされる。この監督は群衆の撮り方が本当に巧い。本作は中国本国で観られるようになったのだろうか。
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