コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 誘う女(1995/米)

「スリラー」でも「サスペンス」でもなく、ましてや「ドラマ」などではない。ジャンル分けするならば、これは間違いなく「コメディ」でしょ。
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







先日観賞した『マイ・バック・ページ』。主演である松山ケンイチがインタビュー中で「山下監督に観ておくように言われた映画」として本作『誘う女』を挙げていた。『冷たい熱帯魚』の園子温監督がスタッフに毎回観せる映画として『復讐するは我にあり』が有名だが、「名作を撮る名匠の推薦作品に外れなし!」の理念のもと、本作も観賞。GVSはマイフェイバリットディレクターの一人で、中でも『グッド・ウィル・ハンティング』『小説家を見つけたら』は自分としては珍しくDVDまで購入し、何度も観ている作品だが、本作はシネスケでの評判の悪さも先立って、ずっと敬遠していた節がある。で、やっとのことで今回観賞したわけだが、うん、面白いよ。全然悪くない。

いかにもGVSといった感のあるドキュメンタリータッチで若者に自己表現させる手法であるとか、随所に使われるBGMとしてのメタルがミヒャエル・ハネケの『フェア・ゲーム』っぽいなとか、寒村で起きる殺人事件という意味では『ファーゴ』とか『シンプルプラン』を想起させる画作りだなぁとか、まあ観ている間色々と勘繰ってはいたが、何といっても白眉はニコール・キッドマンのビッチ演技なわけで。情熱と知識はあるけれど、センスとインテリジェンスのないキャリア志向の女(=この世で最も関わり合いたくない不快な生き物)を自身の私生活を彷彿とさせることも厭わない成り切りぶりで演じており、彼女のキャリアの中でもハイライトな一作である。

話の展開がお粗末であるとか、ストーリーテリングが凡庸であるとか、テーマに対して描き込みが軽い、とか色々と批判がでそうな印象もあるが、そもそも劇中に登場するホワイトトラッシュたちの脳みそたるやモスキート級なため、これくらいの語り口が丁度よいのである。フラッシュバックを主軸に据えた編集もテンポよく飽きさせない。金曜の夜あたりに、ポップコーンでもかじりながら観るには、最適な映画であると思う。

補記1 試着室で二コール・キッドマンがみせるブルーの下着姿が最高にいいんだ。ぷりっぷりのケツ。細いけれど肉感のあるアンヨ。もうたまらんね。

補記2 ケイシー・アフレックは、ホワイトトラッシュを演じさせたらマジでNO1だDADA。GVS作品では『グッド・ウィル・ハンティング』でもバカの仲間内のNO1バカを好演していた。もう、こいつのシリアスな演技はまともに観れそうもない。

補記3 劇中のニコール・キッドマンと、松山ケンイチが『マイ・バック・ページ』で演じた片桐は「自らの理想像に永遠に追いつかない凡人」という点で共通している。山下監督が演技の参考にしてほしかったのは、ニコール・キッドマンのあの絶妙な「虚言や妄言をはき始めるときに微妙に目が泳ぐ仕草」ではなかろうか。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] ジェリー[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。