[コメント] タイムマシン(2002/米)
H・G・ウェルズの原作を、現代の新刊だと思って読んでごらんなさい。あまりにもテキトーでビックリします。それでも傑作の評価が揺るがないのは、昔に書かれたものだ、はじめて時間旅行のアイデアを世に問うた作品だということを、実は誰もが意識して読んでいるからだろう。
この映画がかなり不評なので驚いたのだが、こういう映画は子供に戻って観なけりゃいけません。ホントに10歳以下の、色気づく前の子供にです。のちの展開を「こうなるだろうな、こうなるべきだ」だのと予想するなんぞもってのほかです。スレた大人の映画の観かたを忘れ、ただただ目の前で起こることを見ていればいい。かなり無理のある展開でも子供は「そういうもんなんだろうな」と受け入れる。そして驚き、怖がり、時には退屈し、傷つき、ワクワクする。
同じウェルズ原作の『ドクター・モローの島』(1977)なんか、今観ると相当ヒドいよ。でも今作と『ドクター・モロー』の両方を観た人の中では、『モロー』に軍配を上げる人が多いかもしれない。それは、子供の頃に観たからだ。批評しようなんて考えず、ただドキドキして観たからだ。
映画の欠点は忘れても、強烈な印象は大人になっても忘れない。それでいいのだ。ある種の映画は、大人がマジメに観れば最低かもしれないけれど、子供には深い印象を与えてのちのちまで影響を及ぼすことになる。そしてそういう映画の功績は、映画史の中で評価されることがほとんどない。オレはそんな映画を、子供の頃にたくさん観た。『戦慄!プルトニウム人間』、『大アマゾンの半魚人』、『巨大蟻の帝国』・・・まだまだいくらでもあるぞ。そりゃどれもこれも、大人になった今観れば確かにヒドいよ。でもオレはそんな映画が好きだ。
『タイム・マシン』には、原始的なワクワクが確かにあった。そりゃ出来は悪いよ。きょうびの感覚では、SFですらないかもしれない。だけどいわゆる「ファーストフード映画」にすらなれない、こういう駄菓子みたいな映画がオレは好きだ。
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