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[コメント] チョコレート(2001/米)

アメリカにいくたびにいつも思うのだが、向こうのチョコレートはミルクが多すぎるのか、甘ったるくてしょうがない。引き締まった味にするには、もう少し苦味の欲しいところ。この作品についてもしかり。(レビューは後半部分の展開に言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とある南部の町。店も人通りも少なく、まるで時代から取り残されたような趣き、娼婦も彼女一人ぐらいしかいないのだろう、親子を一人で相手しているありさま。

その家にはいつも男しかいない。女はみな立ち去ってしまった。「取り残された」男は自分の運命を悟りつつも、負けを認めたくなかった。子どもに厳しくあたるのも、人種差別的な態度をとるのも、自分の弱さを必死で隠すためだったのではないだろうか。この負の連鎖は、父系のこの家族につぎつぎと受け継がれていく。男が父親や息子に抱く苛立ちは、自分に向けた怒りでもある。本当は敏感な感覚をもっている男はとっくの昔からそんなことに気づいている、しかし負の連鎖は簡単に断ちきれるものではなく、男はいつしか無口になる。それは南部の空気の描写にも繋がる。

と、設定には強く惹かれるものがあった。が、肝心のその負の連鎖が絶たれる出逢いや、新生活への意欲などといった部分の描写はかなり貧弱だった。南部の空気=家族の負の連鎖の描写が説得力をもっていたために、それを越える何かを示すにはもっと緻密に描いていかないと厳しいものがある。この描き方では、女は、男が自らの正体(死刑をみとった看守であること)を隠していたことに気づいたとき、何も言わずそっと町を出ていくという筋のほうが妥当に思える。ただ傷をなめあっているだけでは、いずれすれ違う時が来る、そこまで書く(もしくは負の連鎖が絶ちきられるだけの何かを描ききる)のがこの話の落とし前ではないだろうか。

チョコレートは「求めてしまう何か」を体現していたのかもしれないが、肝心の男と女の自我まで「溶かして」しまっては、話としては引き締まらない。残念ながらハル・ベリーの演技は過剰なだけ、もっと抑制をきかしてこそ、燃えあがる情念を表現することができる。いまいちだった。

*IMDbを見て気づいたが、死刑にされた夫役のショーン・コムズは、あの有名なプロデューサーであり自身もラッパーである、パフ・ダディー(=ショーン・パフィ・コムズ、ジェニファー・ロペスの元恋人)だった。さりげなさすぎて気づかなかった。

(評価:★3)

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