[コメント] シカゴ(2002/米)
やはりボブ・フォッシー御大自らが映画化していてくれれば、と切実に思う。そうでもあれば、さぞやエロティシズムを横溢させたオトナのミュージカルになっていただろうと思うと残念でならない。
この映画の見所と言えば、雌豹のようなキャサリン・ゼタ・ジョーンズのしなやかさと冷たい色気を兼ね備えた演技に尽きる。『オール・ザット・ジャズ』というフォッシーのあの作品をすぐに思い出させるナンバーの官能性はどうだ。これを見るかぎりでは、フォッシーの一番弟子だというロブ・マーシャルの可能性を期待させられる。
しかし、レニー・ゼルウィガーの悪女役は随分頑張っていることは納得した上で辛く採点せざるを得ない。キャサリンとタメを張るには普通の女優すぎるのだ。やっぱりこの娘、ブリジット・ジョーンズが生涯のハマリ役か。ミュージカルに出演するには十年早いと言わざるを得ないし、マーシャルは彼女を使い切っていない。
極めつけはリチャード・ギア。こんな箸にも棒にもかからぬ男をミュージカルに登用するのが間違っている。彼がひとりでこの映画の空気を乱しているといっても過言ではないくらいの、あの華の無さ。
やはりこのメンツで映画化したのは、競争の末に映画化権を獲得したミラマックスの商魂がなせる技であることは否定できないだろう。だが、これはミュージカルなのだ。画面に魂を奪われず、冷静な眼で見ていればただのアラだらけの劇映画でしかない。そういった観客を釘付けにする魔術を心得ぬスタッフの下では、この美味しい素材も成るべくして宝の持ち腐れになったと言ってよかろう。
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