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[コメント] たそがれ清兵衛(2002/日)

日本人の大好きな時代劇、侍、家族、倹約、苦労などなどをうまくアレンジした娯楽作品。現代と時代劇のマッチングには違和感が残る。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作公開当時、NHKで山田監督の特集がやっていた。監督は本作で、『幸福の黄色いハンカチ』記念館に貼られた何百枚ものハンカチに記された内容を元に、現代人の悩み苦しむ姿を描きたい、そんなことを言っていたように記憶している。

その通りの作品だと思った。まさにこれは現代のお話だ。江戸時代だって、貧しさに苦しむ侍がいてもおかしくない。そう、いたに違いない! 観るもののそんな想いを拠り所にしているのは明らかだろう。

真田広之演じる主人公とその家族描写(特に2人の娘)は素晴らしかったと思う。しかし、痴呆症の母がいたり、無法に訴えるリストラ侍がいたり、ローン(負債)に苦しめられたり・・・、と、とにかく、もう現代を詰め込みすぎた嫌いがある。そして、真田広之の貧乏ときたらとても侍には見えない。なんたって、武士の魂の刀すら売ってしまうんだから・・・。生きるためには刀まで・・・、でも魂は売らず・・・。これが本作のポイントではありますが、私にはどうもしっくりこない。

本作は、「いつの時代も人は苦労している。侍だって苦労したんだ。よし、頑張ろう!」という前向きな作品ではない。 どっちかと言うと、「侍だって苦労したんだ、俺が苦労するのもしょうがない・・・」と、感情移入させた末の諦めのような作品だ。この理屈でいくと、未来もしかりになるわけで、救済の無い作品との感が残る。

つまり、それは現代への幻滅に端を発しているわけで、それはどうかと思う。身の周りの困難を時代とか社会とかのせいにするのは問題ではないかと。少なくとも、武士はもっと誇り高いはずだと・・・。

つまるところ、「勉強して、自分で考え、判断できるようになりなさい」が監督のメッセージなのかもしれませんが、これも時代劇にあっては、余計なご説教です。

(評価:★3)

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