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[コメント] たそがれ清兵衛(2002/日)

真田広之の芸域が広がるのは結構だが、しがないサラリーマンを映す鏡像を演じることはどうか勘弁願いたい。岸恵子のナレーションとエンディングも、そんな父親をすみのすみまで知って慰めるようで情けない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







清兵衛は終業とともに帰宅、貧しい家族とともに内職に精を出す。おのが身を洗いヒゲを剃ることも稀なので、不精ヒゲで悪臭がする(加齢臭のアレゴリーか?そのわりに娘らは嫌がっていないが)。そんな清兵衛が実は剣の達人だったことが発覚し、ある人物の上意討ちを命じられる。ここでも清兵衛は相手の身の上話に剣をためらったりする。

要するに、極力スーパーマンらしさを取り去った真田広之を描こうとしているのだ。侍らしからず、家族や恋人のためにやむを得ず殺人を仰せつかる「普通人」を。しかし、殺しというファクターをひとつ付け加えただけでこの設定はガラガラと崩れ去ってしまうことを知るべきだ。おそらく山田洋次が撮ったもっとも大量の血の奔流を前に、「庶民的な父親の礼賛」などという幻想は何処かに飛んでいってしまう。やはり庶民を描きつづけた山田に、侍を描くのはお門違いだったと言わざるを得ない。

真田広之は、爽快な殺陣の見られる時代劇で観たいものである。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)林田乃丞 G31[*] ボイス母[*] 草月[*] HW[*] ツナ缶[*] トシ[*]

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