[コメント] Dolls(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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最早世界的な監督として広く知られるようになった北野武監督が投入した、美しくも残酷な愛の物語。エンターテナーとして知られる人なのに、『あの夏、いちばん静かな海。』(1991)とか、本作とか妙な…と言っちゃ悪いが、非常に芸術的な静かな作品も作ってくれる。
本作は本当に分かりづらい物語で、ストーリーも全て悲劇。しかも台詞が極めて限られてる。いや、そもそも監督の映画には台詞をとにかく限定するものが多い。
これを考えてみると、喋ることが仕事の監督だからこそ、台詞の間合いというのをよく知っているからこそなのだろう。会話の中に間があるのではない。間の中に会話があることを、この監督ほどよく分かってる人はない。
しかし、これは凄い。限定された台詞を観てる側はいつ出るかと固唾を飲んで待つことになるのだが、その待ちの間に流される映像美と音楽の素晴らしさ…台詞が少ないからこそ、観客の目は画面に釘付けにされ、集中して観ることになる。四季折々の美しさが画面に出ているが、その中で、四季それぞれに、一回は凄まじいカメラワークと、息をのむシーンが登場する。これがこの映画の醍醐味だろう。春のシーンではマジで映像の奇跡が起こったかと思ったよ。私は。まるでタルコフスキーを観てるよう(褒め過ぎか?)。
「桜の木の下には死体が埋まってる」とは梶井基次郎の言葉。人の死を吸い取るからこそ、自然は美しくなる。そして命がないからこそ、虚ろであり、それが美しさとなる浄瑠璃人形。それに被さるように、心が壊れてしまい、虚ろさと命が混在するキャラクター達…そりゃ勿論観方によってそれぞれだろうけど、死…と言うより「虚ろさ」の持つ美しさが混在した、いわゆる北野流のチャレンジと遊びに溢れた作品だと言える。
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