[コメント] レッド・ドラゴン(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この始まりは『羊たちの沈黙』の表裏を物語る。あのクラリスが苦戦した、あのレクター博士との対話。そして『ハンニバル』で苦戦したパッツィ刑事(ジャンカルロ・ジャンニーニ)との対話。このグレアム捜査官(エドワード・ノートン)とレクターの会話は、このシリーズとしては違和感がある。聞けば原作にはないシーンとなれば、なおさらこのシーンの趣に魅力を感じてしまう。エドワード・ノートンの美しさよ。このいかにもアングロサクソンと見えるアメリカ人の美しさ。その知性。この映画の彼は見事だ。美しい。それは『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターでも、『ハンニバル』のジャンニーニでもなく、間違いなく新鮮な美しさ。そして刺激的な美しさ。男の中の男ではない、いかにも彷彿とさせる何か。この存在がこの映画を大きく左右する。
ホプキンスも良い、カイテルも地味だが魅力ある演技を見せているもののノートンの美しさに影が薄い。
大プロデューサーディノ・デ・ラウレンティスの凄さは、その映画そのものの持つ圧倒的な支配力だ。彼は大プロデューサーにして偉大な作曲家のようでもある。これだけのスターを揃え、見事にまとまりある作りにしてしまう力はこの男あってのことでしかあるまい。その中に潜むイタリアのテイスト。この香りは既に『ハンニバル』で周知のことだが、ここでもその匂いと香りを演出する手腕は見事。
何しろ、あのレイフ・ファインズを醜い男としてしまう贅沢さ。この悪趣味なドラゴンという男にしてしまう強引なところが恐ろしい。芸術とは創造と想像力。この役にファインズをあてた男こそラウレンティスに違いあるまい。
エミリー・ワトソンも素晴らしい。この盲目の人。そして愛の表現たるや体当たりという表現が最も相応しいだろう。目をそむけたくなるほどの美しさである。まぶしい輝き。この人の演技は時としてダサい。うっとうしいのである。しかしこの映画ではその厚かましいほどの演技が”盲目”というスタイルをもって自然さに変わっている。盲目の女性がこれほどまでにポジティブになれるのか。そして愛することはこれほどまでの盲目なのか。ファインズとのシーンは美しい。そそられる。
これはホモの映画だ。いわばレクター博士は両刀使いである。そしてこの美しい男。ノートンでありファインズであるこの男を美しく見せる愛情のシーンはヨーロッパの香りだ。ヴィスコンティをも思わせる美形の男たちを最後に対峙させるとは何とも贅沢。ノートンを青、ファインズを赤にして対比させているところも魅力たっぷりだ。レクターは言を左右にしてあらゆる知的な者に愛情を注いでいる。この一環した態度がこのシリーズの柱だ。
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