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[コメント] 至福のとき(2001/中国)

ハーゲンダッツが象徴する現代と近代の端境。歴史的なうねりのなかで前向きに生きる人々がうまく描かれている。
マーヴィン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







中国と日本。

現在の両国を比較した場合、もしかすると「明と暗」という両極に表現されるかもしれない。

ラストシーン。全盲の少女(ドン・ジエ)は一人で父親のもとに旅立っていく。金もなく、また父親の所在も正確にはわからない。けれどもたった一人で雑踏のなかを歩いていく。必ず父と会えること、そして自分の目が治ること。それを信じて歩いていく。

この少女こそが現代中国の象徴かもしれない。目は見えずとも、行き先は定かではなくとも、進み続ける。きっとその先に光があることを信じて。

果たして、今の日本に先の光を信じ進むことが出来るだろうか?今は明るく照らされ、不自由なく暮らすことができる。しかし、先に見えているものは喪失の予感だけかもしれない。

何も見えずとも、どこに向かうかわからずとも前に突き進めるものと、すぐ目の前にくっきりと広がっているように見える破滅に恐れおののくもの。持つものと持たざるものとの葛藤が幾重にも絡み合って作品を織りなしている。そんな印象を持った。

時は流れるほかない。社会は変わっていく。多くの人は乗り遅れ、いつの日かこぼれ落ちる。それでも自分の足で歩いていく。歩いていける人は美しいのだと思う。

(評価:★4)

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