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[コメント] アバウト・シュミット(2002/米)

これは余生をいかにしたら有意義に送れるかというテーマに真剣に取り組んだ作品だ。(05・5・1)
山本美容室

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 主人公シュミットジャック・ニコルソンの勤めていた会社は保険会社だ。人間はいつか誰でも必ず死んでしまう。そういう意味ではわれわれ皆が余生を送っていると言える。

 考えてもらいたい。資本主義社会アメリカで定年まで勤めあげてしまうのは、よほど会社に必要な人材か無能な人材かのいずれかだろう。

 オープニングの5時まで時計を見つめているだけのジャック・ニコルソンは、送別会を開いてもらう人望はあったにしても後者に属していたのではないだろうか。

 保険会社には嫌な思い出がある。入院給付金を貰ってしばらくして「解約をしたい」といつも世話になっていた生保レディーのおばさんに電話をした時の事だ。

 しばらく「年齢が上がると掛け金が上がるのが嫌だ」とか「今後は掛け捨ての共済に切り替えたいから保険はやめたいのです」と言ってもなかなか解約に応じてくれない。

 最後に解約を取り付けて「どうもいままでお世話にな…」最後までこちらが話していないうちに電話は向こうから一方的に切られてしまったのだ。

 電話の向こうでオバサンは怒っているのだ。この時に保険会社は「死の商人」であることに改めて気がついたのである。私という人間は、オバサンにとって成績という「数字」の一つに過ぎなかったのだなぁ。

 話を映画に戻そう。この映画には「妻の葬式」のシーンが出てくる。葬儀屋が費用の相談をニコルソンと金額を交えながら「墓地までの運送代が××ドルで…」などというシーンが挿入される。

 「これはアメリカ版『お葬式』だな」と思いながら見ていると、娘から「一番安い棺にママを入れたわね!」と責められる場面が出てきた。

 日本人は、戒名にこだわるがアメリカ人は、棺のランクに執着するんだろうか。向こうは火葬じゃなくて埋葬だからなぁ。

 ラストでンドゥグという子供の里親からの手紙を読んで、主人公の男は初めて心からの「純粋な涙」を流した。娘の結婚式でも泣かなかった男である。

 人は誰かの役に立っていると気付いた時にあのように泣けるのだと思う。良い映画を見た。

 メモ  DVDにはカットされたシーンとその意図の説明が収録されている。

(評価:★5)

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