[コメント] アララトの聖母(2002/カナダ=仏)
とにかく、最後の最後まで気を抜かない、手も抜かない。監督の強い熱意が隅々までちりばめられた佳作。かなり熱くなった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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とても感心したのが、主人公の青年ラフィが、最後に刑務所の恋人シリアに会いに行くシーン。彼女にトルコで撮影したビデオを見せるシーンでグッときてしまった。それでいてシーンとしては静かに流れている。あぁ、そうか、緩急の使い方が絶妙なんだ。
あとラフィとトルコ系俳優アリとの会話のシーン。このアリという登場人物は、それまでは美術館員の同性愛の恋人としてだけの存在だったのに、この何気ない会話のやり取りが、この物語の核心にふれるとても重要で印象的なシーンとして深く心の中に残った。
もうひとつ、劇中劇の撮影中に、アニ女史がやや混乱しながら乱入してくる場面。そのとき、誰もがアルメニア人監督と女史との「対決」になるかと思った瞬間の、ブルース・グリーンウッド演じる医師役が、まさにその医師がその場で女史に語りかけたような言葉が、深く胸をえぐる。
美術史の講師の女史、その息子、義理の妹である息子の彼女、定年間際の空港の税関、その息子の美術館員、彼の恋人のトルコ系俳優、そしてアルメニア人監督と脚本家、医師役の俳優。みなそれぞれ何かから開放され、ちょっぴりだけ幸せになる。重いテーマをばらばらになることなく、虐殺の悲劇を押し付けることなく、あくまで娯楽映画という尺度で表現した力作。
しかし日本も他人事ではないね。
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