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[コメント] 座頭市(2003/日)

金髪というウソが他のウソと辻褄があってくる妙。レビューはなつかしい毒針巷談風「たけし自作をメッタ斬り」。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







勝さんのイメージが強すぎるからさ、着物を着て仕込み杖持って目をつぶってもどうにもならないわけ、絵的に。新春隠し芸大会のハナ肇さんにしかならない。こりゃまずいやってどうしようか考えて、最初頭そっちゃおうかなと思ったんだけど大島さんの映画で1回やってるし、あんまり変わんねえなぁ、じゃあ髪染めるかってそれで金髪にして、どうにかこれならもつかなってことになったんだけどね。どうせまともな時代劇撮るつもりないから、いいやこれでって。でもこれが案外いい思いつきで、世界観が見えてきたっていうかさ、この座頭市のさ。結局フィクションってのはどうやってウソついてもウソに感じさせないかってことだからさ、どこまでウソをつくことにするかって線が見えちゃえばいいわけ。こっちでついているウソの尺度と、こっちでついてるウソの尺度が違っちゃうとウソがばれておかしな世界になっちゃうんだよ。最初から今回は勝さんのやつでもない、いつものオイラのものとも違う世界になるかなってのはあったんだけど。…頼まれ仕事なのにいつものオイラの映画みたいに客が入らないと困るからって・・・大きなお世話だっての! だからどんな世界を作るかってのが勝負かなってのはあってさ。一応さ、座頭市をあのキタノ映画でって世間の期待みたいなのもあるじゃない、これにも応えなきゃまずいかなっていうのもあるから「リアルな痛み」にはこだわろうかって、「刃物としての刀」という表現はしたんだけど、殺陣のかたちは「見せる絵」にこだわったチャンバラなんだよ。「リアルですねえ!」なんて言ってるやつがいるんだけど、石灯篭ぶった斬っちゃっててリアルなわけねえだろうって。血飛沫や裂ける着物も本当のリアルじゃないわけだし。ほんとにリアルかどうかじゃなくてその世界でリアルであることが必要なわけだけから。前に健さんの映画に出たときにさ、包丁で背中に斬りつけると服が裂けて中から刺青が現われるって台本にあったんだけど、やってみると実際は全然思ったように見えてこないの、刺青。監督も悩んじゃって、うーん、それでも「斬りたい背中」って。…また小説書くから芥川賞くんねえかな。でさ、三角形のさ2辺斬ればめくれるじゃない、服って。だから今回はちゃんと二太刀あびせようとか、どうでもいいとこにはこだわったりしてね。そういうところはリアル。村祭りと決闘をオーバーラップするっていうのは最初からあったんだけど、決闘がわりにありきたりじゃない?黒幕の正体とかもさ。だから祭りの踊りだけでも絵になるもんにしたいなってのがあって、まあ今回は「浅草集大成」ってことでタップにしようかって、時代劇の衣装で集団タップ。これでウソからはみ出ないのは、殺陣もそうなんだけどさ、やっぱり金髪ってのがあるわけ。うまくおさまったかなってのはある。とりあえず「もつ」絵をつなげていかないとしょうがねえかなっていうのはあるんだよ。面白いもの作るのはさ。とりあえずそれが優先で、まとめから先に考えない。終わってみればウソのバランスがちゃんととれている。おれって天才かなって。最初から計算してました、なんて。これじゃやばいか、とか、これならいけるかなとか。オイラらこのギリギリいけるかどうかっていう見極めは自信あんだよ。「もつ」「もたない」ってのはお笑いのライブの感覚だからさ。他の人がこわくてとれないような間とかでもさ、まだいけるかなって。やばいな、って時に浅野さんって保険も用意してあるし。映画雑誌の記者とかで「勝新太郎さんの座頭市は意識しましたか?」なんて質問するやつがいるんだけど、映画のこと書いてるなら「『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を参考にしたんですか?」ぐらい気の利いたこと聞いてこいっての! ジャンジャン。

(評価:★4)

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