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[コメント] 座頭市(2003/日)

市は何故、踊らなかったか?
町田

金髪がどう、とか、視力がどうとか、勝新版だったらああだった、とかそういうことではなく、ただ単純にこの映画が鑑賞前に抱かせる様々な期待に比して面白くない、という事実が俺にとって重大である。

ガダルカナル・タカと彼が演じた「ガラっ八」(@『銭形平次捕物控』)的キャラが良い、ということに異論は無い。

異論はないのだが、彼(ら)の生む笑いと大衆演芸・和製ミュージカルシーンの持つ娯楽要素を合わせても、画面とたけし演ずる市と彼の繰り広げる「人斬り」が齎す陰惨さ=暗いトーンに対抗しきれていない、平たく言えば両極性・メリハリに欠けており、鑑賞後に爽快感とか開放感とかいったものが全く得られず”どっ白けに終わった”という事実を見逃すことが出来ない。

”ぼやき”とストップモーションに拠るラストショットのお粗末さも然ることながら、俺が特に許せないと思ったのはラストのタップシーンに於ける情熱の無さ、喜びの無さ、である。

たけしはなるほど芸術の良き理解者であるが、特に最近は批評家的でありすぎるようだ。あそこは明らかに立ち位置が間違っている。

そう、市も、群集に無理に袖を引かれてでも、照れくさそうにでも、不器用にでも、舞台に上がって踊るべきであったのだ。

画面から、喜びとか悲しみとかそういうものが、何も伝わってこないミュージカル場面なんてのは音の無い花火と同じである。これでは海外の映画批評家のウケを狙った作品、と揶揄されても仕様がないだろう。

またムーン・ライダース鈴木慶一の手掛けた音楽は、なるほど近年の久石譲のようなでしゃばり感はないが、それにしても手堅すぎ印象が薄かった。

打楽器の遣い方など”’80年代の前衛”という感じで何の個性も感じられない。

それでもタランティーノを軽く凌ぐ殺陣の迫力(特に相手の親指ごと切り払う描写は斬新!)は流石。

(評価:★3)

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