[コメント] 座頭市(2003/日)
北野作品は自分には合わない。それは何作も観てわかっているはずなのに。
なぜなら観客の中のリズム、そして呼吸を読まないからだ。 いや、読んでいるのかも知れないが、編集ではずしている。この作品は編集も北野武自身だ。それは彼特有の照れなのか、本当に読んでないのか、無視しているのかはわからない。 しかし、彼の作り出す1シーン1シーンには見事なほどに余韻がない。この乾いた雰囲気が世界では受けているのかも知れないが、私はウェットな国の名もない観客。画面でいくら雨が降っても私の心は濡らしてくれない。
浅野、夏川の扱いは特に微妙だ。彼ら夫婦の描写に深みを与えてない分、対決にしたって手に汗握れない。敵が多い(多すぎる)のは監督のサービスかも知れないが、ターゲットが集約されない分、マイナスの効果しかなかった。しかも終盤収拾がつかなくなってしまったらしく彼らの扱いが限りなくいい加減。いくら華麗な殺陣であってもよくやりましたと拍手こそすれ、私を最後まで映画館にうずくまる観客以外の何者にもしてくれなかったのはうらめしい。
唯一乗せてくれたのは鈴木慶一の巧みな音楽、そして切ったら裂けるという(至極当然の)衣服の効果だった。日本の時代劇は刀で切っても衣服が裂けないことが多い。たとえそれが「様式美」という今までの時代劇の見せ方だとしても私にとっては不満だった。不満であることもわからなかった。それが市が瞬速の殺陣で舞うたびにスパッと裂ける。まさにあの『奇傑ゾロ』のZ字である。「これだよこれ!」と胸が躍った。実に爽快だったので★1つ、おまけ。
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