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[コメント] 座頭市(2003/日)

座頭市ファンのための、と言うよりは、たけしファンのための映画である。たけしの市はシャイで、高飛車で、悪戯好きで、そして血に飢えている。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







確かにたけしの殺陣は凄い。マカロニテイストの時代劇好きにはたまらないだろう。そしてカメラワークも見事である。だが、「座頭市」にそういったものを求める観客ではない自分にとっては、退屈はしないけれどもいちいち癇にさわる映画だった。

たけしの背中には勝新に見られるような悲哀がない。優しさはある(のかもしれない)が、素直にそれを見せて相手を気遣うことをしない。やんちゃ坊主がそのまま大きくなったようで、度を過ぎたナルシシストである。そう、この市はたけしそのものなのである。このあたりに俳優・ビートたけしの限界を見る。

ラスト近く、激しく怒りが込み上げた場面がある。市の目が見えるのだと「解釈」した悪党の首魁が、市になぜ盲人のふりをすると問う。市は答える。

「その方が都合がいいもんでな」

これは仇を狙いつづける姉弟の女装の弟が、なぜ女装を続けるのかを訊かれて「その方が都合がいいからよ」と答えたのを真似たのだが、盲でなく、何のコンプレックスも持たない殺人鬼になんの魅力があろうものか。その上で市は、老いた悪党に「さあ殺せ」と開き直られると、真一文字に両目を切り裂いて「一生盲のまま生き続けろ」と言い放つ。

なんて野郎だ。盲目の悲哀を知りもしない男が!

…と思っていると、ラストのどんでん返しで、あれは虚勢をはっていただけで本当に目は開いても盲目であった、ということ「らしい」。なぁんだ、で終わり。

だが限りなく優しい勝新の市をすでに観てしまった自分にとっては、ペーソスなきたけしの愉快犯ぶりは感情移入を拒むものであった。後味、きわめて悪し。

(評価:★3)

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