[コメント] 名もなきアフリカの地で(2001/独)
予告編やポスターを見て異世界を通した幼い娘の成長譚と思っていたが、実際のところはともに祖国を離れた夫婦間の愛と葛藤の物語。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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かつて故国でインテリであった夫は自己の誇りを取り戻すためにも祖国の復興に情熱をかける。この農園は自分のいるべき場所ではないとの思いを常に抱き暮らしている。男の視線は現在を飛び越し未来に向いている。
いつでも自分の周りを大事に守ってきた妻はいつしか農園の暮らしに慣れ、そこで生きる喜びを見出した。彼女の居場所はいまここに現前している。女にとって現在の延長線上に未来がある。
男と女の視線はまったく別のところにあり、二人が離散するのも時間の問題のように思えた。しかし、ある日襲ってきたイナゴを家族全員で結束して追い払うとき、男と女はかつて自分たちを繋ぎとめていた愛の存在に再び気づいた。そして家族は祖国に帰る。
自己の出自や誇りと祖国への思い、成長していく幼い娘、アフリカの自然や大地、そして男と女。重厚なテーマを扱った大河ドラマであったが、着地点が夫婦の愛の再発見にあるのならもっと夫婦の葛藤について話を絞るなり、逆にもっと懐の広い話を志向していたなら最後まで複層的な語りを維持してほしかった思いがある。娘の扱い方や料理人の位置など多少散漫な印象が残った。
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