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[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)

「アメリカ」を描こうとするからジャンル映画にならないのはわかる。とはいえ普遍性を欠く物語を見せられても傍観者である私は困惑してしまう。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この物語において本来あるべき普遍性とは、あの日誘拐されたのが俺だったら、疑われて殺されたのは俺だったかも知れない。。。なのだろうが、原作通りなのかどうなのかわからないけど、そこは全然そう思えない。そこが人生の分岐点ではあったのだろうが、それは本作の事件とは直接関係ないと思う。子どもが大人にレイプされようとしたのを目撃し、止めようとしてレイプ犯を殺害してしまう。その時必要以上に興奮して逆上したことと、それを冷静に他人(この場合は奥さんなんだけど)に説明できないほど平常心を失ったことはトラウマと関係があるとはいえ、そういうトラウマがなかった場合、たとえばそのレイプ未遂の現場に自分がいたことに問題がある人が誤ってレイプ犯を殺害してしまった場合でも、まったく同様の状況になると思う。つまり「偶然」でしかない事象に、人生の分岐を結びつける「必然」が感じられない。まして、あの日誘拐されたのが俺だったら、疑って殺したのは俺だったかも知れない。。。にはならない。それはジミーの生来の気質からくるものだからだ。

監督が作った『チェンジリング』も『恐怖のメロディ』も『真夜中のサバナ』もいわゆる「ミステリー」というジャンルにおさまらないことが、人間なり都市なりを奥深く見せて、唯一無二の傑作になっているのだろうと思う。本作は「アメリカ」(の問題)を描かんとする姿勢はよくわかるのだが、とりあげたテーマがアメリカだけにかかわらない普遍的なものだけに、アメリカ以外の人に「何が言いたいの?」と思わせてしまっている気がする。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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