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[コメント] 幻の女(1944/米)

主人公は容疑者・アラン・カーティスかと思わせておいて、プロットを秘書のエラ・レインズに引き継ぐのだが、彼女の探偵物語になってからが断然いい。バーテンダー尾行シーンの濡れた舗道。列車のホームの夜の表現、見事な情感創出だ。
ゑぎ

 また、エリシャ・クック・Jrがかなり目立つ良い役を与えられていて嬉しくなる。クック・Jrはレインズに誘惑される役なのだ。この場面の彼女は随分と芝居じみたセクシー美女に変身する演出で、この辺りはちょっと現実離れした、いかにも娯楽映画らしい部分だが、二人で行くジャズ・バーのシーンは気狂いじみたセクシャルな表現で特筆すべきだ。

 そして最もビッグネームであろうフランチョット・トーンの登場が中盤になってから、というのがキャラクターの扱いとしてカッコいいところなのだが、トーンの悪役造型も特筆に値する。何と云っても彼の手の演技がいい。手で顔を押さえて苦痛の表情をしたりするが、神経質そうなルックスが合っているのだ。クライマックスはトーンの家だが、彼は彫刻家なので部屋に面白いオブジェがある。そんな中で、実にさりげなく手のオブジェがレインズの背景に映される。それも、最も重要なカットでこれを認めることができるのだ。なんて鮮やかな演出だろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)袋のうさぎ 赤い戦車

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