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[コメント] バトル・ロワイアルII 鎮魂歌〈レクイエム〉(2003/日)

前作からして説教臭いのが嫌いだったのに、さらに説教臭くなった。俺たちが求めていたのは、「中学生が最後の一人になるまで殺し合う」 それだけだろ?正しい続編の作り方→
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あーあ、やっちゃった。前作からして説教臭くて嫌いだったのに、「2」は説教ばかりになっちゃったよ。原作が出版されたとき、何があんなにショッキングだったと思ってるんだ?「中学生が最後の一人になるまで殺し合う」俺たちが求めてたのは、それだけじゃないか。それが映画化されたとき、R15指定で中学生は見ちゃダメ、となったら監督も、原作のファンも「ただの残酷な話だなんて思わないでほしい。」「愛と友情の感動的な物語だ。」「中学生にこそ見せるべきだ。」などときれい事並べて持ち上げて。結局完成した映画は、「さあ、感動してください。泣いてください。」と言わんばかりの映画。

原作がよかったのは、説教臭くなくて、それでなおかつ愛だの友情だのを感じさせてくれたからだよ。『ドラゴンボールZ』と同じ。ただただ戦ってればよかったのだ。たとえただの悪趣味映画になってもかまわない。「愛のない『バトルロワイアル』と、愛はあるけど殺し合いのない『バトル・ロワイアル』、どちらが見たい?」と聞かれたら、私は迷わず、前者を選びます。

「2」はそれに輪を掛けて、説教臭くなった。しかもその説教というのが、わけがわからなくてつまらない。「お前たちは何のために戦ってる?」と聞く七原(藤原竜也)。「教師や大人の命令を無批判に受け入れのではなく、自分で考えて行動しろ。」ということが言いたいのかと思えば、話はどうも違う方向に進んでいき、結論が出ないまま終わってしまう。前田愛が「さっきの話、何がいいたいのか全然わかんなかったんだけど。」いや〜、私も全然わかりませんでしたわ。映画を最後まで観れば、監督のメッセージが伝わってくるのかと思ったら、やっぱりわからない。(竹内力もまた首輪をつけられていた、というあたり、やっぱり「他人の言いなりにならず、自分で考えて行動しろ。」というのを感じるんだけどね)「何のために戦ってる?」ってこっちが聞きたいよ。七原の目的は何だ?何を目的として、テロを行っている。BR法の改正?でも映画で聞かされる説教はそれとは全然関係がなさそう。

原作では、「大東亜共和国」という日本そっくりだが、しかし架空の国家が舞台だった。中学生が殺し合いなんていう突拍子もない法律にリアリティを持たせるために、原作者の高見広春がつくった設定だ。映画は、それを日本に戻したのだ。架空の国家ではかえってリアリティがない、というのが映画会社の言い分だ。この点で、原作者と映画会社とは、意見が対立したらしい。しかし、やはり残すべきだった。今の日本には(不満はあるけど)テロなんて必要ない。原作の「大東亜共和国」だったらテロリスト(七原)を応援できたけど、映画は行き過ぎた馬鹿な非行少年の物語にしか見えない。

ではどうすればよかったか。簡単だ。続編をつくるなら、監督も出演者もすっかり変えて、ストーリーも前作とは全然関係のないのをつくればよかったのである。「七原はその後どうなったの?」なんて、どうでもよかったのだ。

原作がベストセラーとなったとき、ネット上では、ファンによる「オリジナル・バトル・ロワイアル」が大量生産された。何故あれだけたくさん書かれたのか。人気作品だから、真似したくなるのは当然だろうが、もう一つ理由がある。それはアマチュアでも簡単に書けるということである。

要するに「閉鎖的な状況で、中学生が最後の一人になるまで殺し合う。」「首輪を付ける」「一人一つずつ武器が与えられる」こうした基礎設定さえあれば、いくらでもつくれるのだ。途中どのような山場があって、どのようにストーリーが進むのか、あらかじめ計画しておく必要はない。まったくのゼロから書き始めたってできるのだ。

告白しましょう、私自身、「オリジナル・バトル・ロワイアル」を書いた一人である(サークル誌に載せたものであり。ネット上では公開しなかったが。本当に素人臭い小説で、ごく狭い範囲で配られるサークル誌だったから載せられたのである)。いやあ、それ以前からオリジナル小説を書いてましたけど、あんな書きやすかったのは、最初で最後ですよ。「ここで信じていた親友に裏切られる」「ここで彼は自らを犠牲にして友人を守る」「死んだと思ってたこいつは、まだ生きていた」その場その場の思いつきで書いて、それでなおかつストーリーは崩壊しないで完成できたんだもの。(私、推理小説が好きなんですよ。だからあらかじめトリックがあって、どういうふうに事件が起きて、と綿密に練らなきゃいけないことが多かったの)

というわけで、「バトル・ロワイアル」を撮ってくれそうな監督を捜しましょう。やっぱり、バイオレンスな映画、怖い映画を撮っている監督がいいな。(北野武は、この際置いておこう)

三池崇史が「バトル・ロワイアル」を撮ったら。R15どころか、R18になるでしょう。

黒沢清が「バトル・ロワイアル」を撮ったら。アクションはほとんどなし。静かな怖い映画になるでしょう。

飯田譲治が「バトル・ロワイアル」を撮ったら。焦点の合わない目や、ヘラヘラ笑いを浮かべた型どおりのサイコ野郎と、エロチックな女子生徒が出てくるでしょう。人間の心に潜む善と悪、というのは、彼の好きなテーマです。

北村龍平が「バトル・ロワイアル」を撮ったら。「日本の中学校って、こんなんじゃないだろ。」「普通の中学生にこんな体力ないだろ」というような映画になるでしょう。全編、森の中で中学生がひたすら戦う。……って、つまりは中学生版『Versus』ですか。

うまくいけば「3」「4」と作られたかも知れない。『ゴジラ』や『釣りバカ日誌』ほど長続きしなくても、数年間は毎年恒例の映画になったんじゃないかな。「今度の主演は……」「今度の教師役は……」とか話題になってね。「次は男子生徒は全員ジャニーズ!」「モーニング娘。が女子生徒!」ってなってたかも。

(評価:★2)

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