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[コメント] 青の炎(2003/日)

凝った撮影に舞台人蜷川幸雄の「嫉妬」を感じた。
sawa:38

舞台においては観客の視線は固定される。観客はその意識の中で台詞を喋る俳優をクローズアップにしてみたり、視線を引いて全体の動きを眺めることぐらいしか出来ない。

この作品では冒頭からカメラは様々なアングルから、時にはトリッキーな撮影手法を用いて撮られている。それはまるで「舞台」という制約から解き放たれた自由な開放感、さらに言えばフリーハンドという玩具を与えられて喜びまくっている感すらある。

心配していた「台詞で伝える」という舞台人特有の悪癖も巧妙に消され、よく出来た作品に仕上がってはいた。主演の二宮和也も厳しい演出に耐え、いい味を出していたと思う。

だが何かひっかかる。「ありがちな青春モノ」の域をでないと感じるのは何故だろう。

同じ湘南を舞台にした『八月の濡れた砂』のやばいくらいの「暑さ」や『太陽がいっぱい』のA・ドロンが犯行を犯した時のくらくらするような「めまい」がなかった。比較するのもおかしな話なのだが、この作品には気管支が詰まるような「暑さ」が必要だし、むせ返るセミの鳴き声に「めまい」を起こさせるような感覚も必要だったと思う。

疾走するロードレーサーのスピード感に「若さ」や「あせり」を表現していたが、もうちょっと、後もうちょっとだけ泥臭い「匂い」を描いて欲しいと思った。

どうもあっさりとし過ぎの感じが強く残ってしまった・・・

(評価:★3)

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