[コメント] ソナチネ(1993/日)
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ラストについては、センチかつ凡庸だったと思います。女との出会いが唐突でいびつであったように、無難なプロットことごとく拒否している作品であるだけに、どうせ大団円を避けるためだけの自害。そうであれば意味を考えさせては駄目で、それならば事故死が妥当だったのではないでしょうか。
ただし、それを差し引いてもすばらしかったと思います。ソナチネのタイトル通り、緊張と弛緩の対比にしてもそうだけども、“こちら側とあちら側”の描き方は秀逸。親分の話を遮って、狡猾な「高橋」をチクリ。場をしらけさせて沈黙。重苦しい空気のなか息を切らすように女をかき分けながら廊下を進むとカメラはてんやわんやで盛り上がる酒場を映し出す。この空気感は、最高の出来だったと思います。
それと勝村政信の好演が目立っていました。勝村演じる若手のヤクザにとって村川は親分でもなければ、兄弟でもない。組のつながりがあるだけのいわば他者。銃のトリックでは不信感を募らせるも、徐々にその大物ぶりを悟りはじめたのか、「ガソリン入れてってくださいね」の言葉でその微妙な距離感がとてもよく現れています。これはラスト付近でも使われていますし、とてもよいアクセントになっています。それまで一貫しておちゃらけキャラのインポテンツ状態だった村川が、まるで事務作業をするかのように真顔で直立したままマシンガンをぶっ放す。その銃撃がつづく様子を階下からしばらく眺めるも、しかし最後までは見届けずカタギの道に進む彼。その後レギュラー化する寺島進も捨てがたいのですが、このときの勝村政信こそ自分にとって最大の収穫でした。
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