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[コメント] ハルク(2003/米)

これならシュワかボブ・サップを緑色にペイントして合成したほうがよい。
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もろに絵、というハルクが悲しい。アニメを見に来たんじゃないんだぞ!実写映画を見に来たんだ!CGの価値は認めるけど、これなら日本式の着ぐるみ怪獣に軍配が上がる。巨大怪獣ならまだまだ邦画も負けてはいないぞ。

特に残念だったのは、ハルクが砂漠を飛び跳ねて遠ざかっていくシーンだ。ハルクが遠くで着地しているのに、ズシンという音が、着地と同時に聞こえてくるではないか。日本じゃすでに『ガメラ 大怪獣空中決戦』が音と映像をずらしているのに、何をやってるんだ!

============ 追加レビュー ==============

以上は映画館で『ハルク』を見た直後に書いたコメント&レビューです。特撮が納得いかなかったので、その不満を吐きだしたものであります。

このときの私は原作未読、TVドラマ版も見た事がない、という状態でした。しかし、お店では、映画の公開に合わせて、TV版『超人ハルク』のDVDが並んでおります。そこで、こちらはどんなのだろう、と思ってレンタル。何よりも、そのジャケットには、コメントで書いた「緑色にペイントされた大男」の写真が載っていたのが、興味をひきました。ついでに映画版も、もう一回見ようか、とそちらのDVDもレンタルしたのでした。(原作は未だに読んでおりません)

いや、これがなかなかの収穫でした。昔の、それもTVですから、今の映画にくらべたらちゃちなところはあるものの、TV版からは、「自分は怪物だ。」という主人公の苦しみが、ひしひしと伝わってくる。特に映画版と立て続けに見ると、その違いがよくわかる。映画版もその点を頑張ってるんですが、TV版にはとても及ばない。映画版は特撮がいまいちなだけでなく、ドラマ部分も不十分なのだったのですね。

わけあってパイロット版(つまり第一話)は後から見ることになってしまったのですが、ビデオの冒頭には、第一話を凝縮した映像とナレーションによって、ドラマの基礎設定の紹介がされていました。

「人間の潜在能力を研究していたデビッド・バナー博士は、実験で誤って多量のガンマ放射線を浴びてしまい、怒りによって超人ハルクに変身するようになった。怪物ハルクは殺人容疑で手配され、博士は自分を死んだ事にしてその存在を抹消し、もとの人間に戻る方法を探す旅に出た。」(原作のブルース・バナーという名前は、ドラマ化する際、デビッド・バナーに変更されたそうです。)

このナレーションを聞いたとき、おおっ、と感動したのであります。この設定だけで、TV版ハルクは、映画版を上回ってる。特に「自分を死んだことにした」という部分。自分の墓を前にした博士は、何とも寂しそうであります。怪物になってしまった男の孤独、「もとの人間に戻りたい。」という悲しみが伝わってくるではありませんか。

考えてみれば、スーパーマンにしろスパイダーマンにしろ、日本でもウルトラマンなど、ヒーローはもともと、「変身するもの」であり、「超人であることを隠して、凡人に紛れて暮らしているもの」だったんですね。それが今では、「少年ジャンプ」や「少年マガジン」を見ても、「変身するヒーロー」「超人である事を隠して、凡人のようにふるまうヒーロー」というのは少なくなってます。映画版はそれを無してしまったのが失敗だと思ったのでした。

超人ハルク』と『ハルク』を立て続けに見たら、その違いがよくわかる。映画版は中盤以降、軍隊との追いかけっこになります。つまり、まわりはバナー博士が怪物であることを知っている人ばかり。ラストで「僕を怒らせると怖いぞ。」と言うバナー博士は、もはや自分が怪物である事を悲しんでおらず、その力を思う存分、利用してやれ、というように見えます。

ついでに言うと、父親との対決もね。あらゆるエネルギーを吸収するようになった父親が、ハルクのそれを奪おうとする。さあ、もっとよこせ。ハルクは、ならば受け取れ、と膨大なエネルギーを放出、父親はパンクしてしまうのであります。……使い古されたパターンだとかいうよりもね、ハルクの強さって、そういうものじゃないんじゃないのかな。

ハルクの持っている力というのは、そのまま、筋力なのであって、ハルクは火も吐かないし、光線も撃たない。殴って、踏みつぶして、ぶん投げる、それがハルクの戦い方であり、魅力ではないでしょうか。それに対して、映画の決着のつきかたは、超能力的なエネルギーだ。

ところで、TV版を見ていたら、変身したハルクが一人、夜の闇へ走り去っていく場面がありました。バナー博士に戻ったとき、服はどうするんだろう?映画版だったら軍が保護してくれるだろうけど……と思ってたら誰かの家の洗濯物を盗んで、代わりに紙幣を挟んでいました。

ははは……。

いやいや、上半身裸のおっさんが洗濯物を泥棒するというのは、何とも間抜けな図であるが、それこそ怪物になってしまった男の悲劇ではないですか。

TV版のラストは悲しげなピアノの曲が流れ、博士がヒッチハイクする映像で終わっています。博士の孤独な旅は今日も続くのであった。(いや『最後の戦い』っていう最終回があるんだけど)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ガリガリ博士 死ぬまでシネマ[*] プロキオン14[*]

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