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[コメント] 月に囚われた男(2009/英)

Raison d'êtreということに関して、これほど切なく狂おしい映画を僕は知らない。
TM

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







力量ある監督だと思う。抑制の効いた序盤、気づかれる微かな違和感、求め、そして明かされる真実。どれほどの絶望か。僕の胸は引き裂かれた。2001年やブレードランナーと同じ問い(だと僕は感じた。すなわち"存在理由")なのに、これまでの作品は圧倒的なビジュアルに僕の頭の別の部分が刺激されて、その問いを「頭で」考えていた。この映画は敢えて抑えた筆致で描かれているために「胸で」感じたのだと思う。神経学的には前者は前頭葉、後者は辺縁系が刺激されたというべきだろうか。

結末に関して、サムのその後を示したことは良かったと思っている。なぜなら、僕はこの作品は"存在理由"の映画だと思うから。振り返って、死にゆく「同胞」に答えた「ゆっくり旅でもするさ」という言葉が響いてくる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus セント[*]

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