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[コメント] 河口(1961/日)

ユーモラスな掛け合いのうちに、言葉には出ない/出来ないそれぞれの心情が巧みに表れていて、そこを察するのが楽しい。
G31

 タイトルの意味はよくわからない。岡田茉莉子がとにかく可愛らしい。大人の女性でありながら、つまりある部分は打算的でありながら、少女のような純情さをそこかしこにたたえている、といった可愛らしさである。

 描かれるのは、「妾」としての人生を選択しつつも、老いを感じた旦那が身を引いたことにより、カセを外されて自由になった女主人公・白川李枝。そして李枝に付き従う、初めのうちはただの世話係だったのが、いつの間にか主従関係の「従」の役割に収まってしまう「旦那」の元秘書役・館林(山村聡)。この二人の間に取り結ばれる不思議な関係が、役者の繊細な演技に支えられ、ユーモラスなものとして描かれる。

 彼女は、館林の前ではガードを下げ、何事も素直な気持ちで相談できる。男への思い悩む真情を吐露したり、関係を切りたい男のあしらい方の助言を得たりさえするのである。一方で館林は、彼女のわがままな要求に、口ではブツブツ文句を言いつつも、ついつい従ってしまう。この男の中にも彼女を征服したい思いは確実にあるはずだが、表面的には下僕の役割を演ずることに充足して見えるのだ。

 一般的には、こうした間柄は倒錯した性的関係を含有するもの、と思う。それを想起させるシーンもないではない(ハイヒールを彼女に代わって揃えてやるシーンなど)が、おおむねそういった要素は排除されている。

 私なんぞは、こういった関係性に健全さを感じ心地よく見るのだが、偽善やうそ臭さを感じる向きには楽しめない映画かもしれない。

75/100(08/02/02見)

(評価:★3)

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