何でもアリ、という意味では、面白いことは面白い。指摘されるように、お笑い出身の松本人志が映画監督業に進出した、というよりは、ダウンタウン松本の（いつもやってる）お笑いが映画というスケールを借りて実現した、という感じであることは否めない。だが、標準的なコメディ映画と比べても大いに笑ったし、少なくとも「映画で人を笑わせる」ということに関して姿勢を崩すような愚かしい態度は（さすがに）微塵もないからだ。

　だからこの点数は、松本人志のお笑いとして採点した場合の（私の感じた）点数である。強いて言えば（チラリと方向を示し得ていただけに）所詮人間の内面というものは描けないのだよとばかりに、二重三重に「笑いの仮面｣を被る方向へ話が進んでいったのは残念だった。例えば、「折畳み傘」や「増えるワカメ」（いざというときに大きくなって活躍する）が、自分の特性と同時に陰茎の隠喩であることは明らかなわけだ。であるならば、より大きくなりたいがために電流を過剰に流して死んでしまった彼の父には、その隠喩に応じた動機があったはずなのだ。そのように話を設計することが映画を撮るということだし、物語を語るということだと、私は信じている。ただ目立ちたがり屋だったから、というのはいただけないし、はぐらかしにもなっていない。

　こう考えてみると、古くからの松本ファンとしては、まあこんなもんかな、とも思う反面、やっぱり少しがっかりだ。映画という場が、彼にとって、自分を仮面から解放する場であってほしかった。余計なお世話と言われるかもしれないけど。

80/100（07/06/05見）