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[コメント] キサラギ(2007/日)

日本初のミステリーコメディ。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ロマンスコメディなら知ってるが、ミステリーコメディなる表現は初めて聞く。当たり前だ、いま俺が作ったんだから。

 ・・・ネットで調べたところ、コメディミステリーと言われるジャンルはある模様だ。ハードボイルドミステリーに対抗するジャンルとしてある、コージーミステリー(お気楽ミステリー)と同じような意味合いらしい。ジェシカおばさんのナントカとかああいう奴(知らんけど)。私が知らないだけで、日本にもたぶん他にあるだろう。

 だが要するに、相当新鮮な体験だった。まず、ミステリーの部分が、一つ一つの要素はお茶の間的というか、ドロドロしていなのに、本格的に組み立てられていること。にもかかわらず笑いに満ちていること。状況によって物語を紡ぐ映画ミステリーにおいて、謎の提示と、推論の積み上げ、それを突きつけることによって秘められた告白を誘う、という展開に説得力を持たせるためには、緊張感とその緩和の繊細なタイミングが必要であり、そのタイミングとは、例えるなら一流のお笑い芸人の絶妙な間の取り方にも通ずる、ということを信じている私にとっては、相当に嬉しい体験でもあった。

 この点に関して最も達者だったのは、もはや役者としてはベテランの部類に入るのだろう、貫禄タップリ?のさすがは香川照之(役名:苺娘)だった。特に彼の場合、さあ皆さんご一緒にツッコミをと言わんばかりの「委ねる間」の作り方が絶品。

 1.(苺娘)俺はストーカーなんかじゃない!ただ見守っていただけだ/(皆)それをストーカーって言うんだよ!

 2.(苺)あの日ミキちゃんはベランダの窓を閉め忘れたまま外出してしまったんだ。俺も初めはベランダまで登るつもりはなかったんだが、怪しい奴が部屋に侵入したりしたらと心配で/(皆)お前のことだろ!

われわれがこの場にいたとしても、まったく同じツッコミを入れていたことだろう。まったく同じタイミングで。

 私にとって、上質のミステリーは最良のお笑いに通ずるという、変なことを確認できた作品となった。

 一つ苦言を呈すとすれば、ドジでオッチョコチョイで天然ボケな(←一緒か)亡きアイドルにすべてをおっ被せてしまっており、人の死を軽々しく扱っていること。いくら生き残った者にホンワカとした感覚を与えたからといえ、二十歳の死は若すぎる。彼女に少しでも長く生きて欲しかった、と思うのが普通の感覚であり、追悼であると思う。生きた人間の側に視点が寄りすぎであり、死者に対する畏敬の念が足りない。

80/100(08/01/14見)

(評価:★4)

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