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[コメント] ブッシュ(2008/米)

オリバー・ストーンの政治的立場を思っても、ブッシュをこんな風に描いて見せる視点に、コロンブスの卵的な新鮮さのあったことは間違いない。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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自分の怠惰や気弱さを克服しようともがいてきた一人の男として、自分なりに自分の弱さを受け入れて人生に向き合ってきた一人の男として、アメリカ合衆国大統領を描くという視点が、しかもあのオリヴァー・ストーンから出てきたことに、コロンブスの卵的な新鮮さのあったことは間違いない。

  ◇  ◇  ◇

 <非白人>の大統領が現実のものとなった今、それが当たり前のことで、なんの不自然さもない、という状況がものすごい勢いで浸透している。それと同時に、オバマ個人の魅力や新鮮さも、急速に色褪せつつあるように思える。そんな現在にこの作品を見ると、ジョージ・W・ブッシュという男は、一人の人間としては少なくとも、そんなに悪い奴じゃない、善人な側面を持っている、そう思えた。

 一つ気づかされるのは、この映画は、彼が大統領在職時にやってきたマツリゴトへの評価、という視点はまったく持っていないこと。映画が持ってない視点について、われわれがとやかく言ったとして、少なくともそれは映画評ではないと思う。だから、この場で彼の在職時の功罪を取り上げて、擁護したり批判したりするのは、無粋であろう。

 たびたび引き合いに出して恐縮だが、例えばオバマと一緒に酒を飲んでも、あんまり楽しそうじゃない。だがブッシュはたぶん、今度ビールでも飲みに行きませんか?ええぜひ行きましょうと誘い合いたくなるような、気さくな男だ。そしてアメリカ社会はおそらく、人の上に立つ者の資質の一つとして、この種の気さくさを求めているところがあるのに違いない(それ一辺倒ではないだろうが)。民主党を支持する立場のストーンが、去年の大統領選に間に合わせるよう急いで作った、という話も聞いたことあるから、不思議な感じのすることも確かだ。だがやはりいま見たら、この次はこんな気さくな奴でもいいかもよ、と思わせることになるのではないか。

80/100

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)FreeSize[*] chokobo[*]

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