コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 戦場でワルツを(2008/イスラエル=独=仏=米=フィンランド=スイス=ベルギー=豪)

かさぶたははがすとまた血が流れることがあるが、この人の場合はどうだったのだろう。たぶん、自分で、むく必要が、あったのだ。人の精神って複雑。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分の精神では受け止めきれないような大きな衝撃を、人の精神は幾重にも覆い隠して、記憶の深い淵に沈めてしまう。これはこれで精神の健全な反応なのだろう。そのまま、残りの人生を過ごす人もいるだろうし、それで済むなら、それは悪いことだとは言えないと思う(あくまで、その人の精神にとって、の意)。だがこの主人公(監督本人)の場合は、闇から生まれた野良犬たちが、真実に目を向けよ目を向けよと吠えたてる。だから彼の場合は、そういう心の声に従って行動することも、悪いことではないはずなのだ。最後に、自分で覆い隠した真実にたどり着いたとき、彼の心は結局また血を流したのではないか、とも思うが、全然そうではなかったのかもしれないし、むしろ映画に撮ることによって今度は忘れないようにしようとしたのかもしれない、あるいはそんなことはどうでもいいのかもしれない。いずれにしても、こういう心の動きの複雑さに人間精神の面白さを見てとってしまう私にとって、この作品はとても完成度の高い作品だなあという印象だった。美をもって醜を描くのは芸術表現として(映画に限らず)普通のことなので、映像は、普通に、美しいなあと思った。他人(=観客)が見るに耐える作品足り得ている、と。ただ所詮は他人様の精神探求譚なので、エンターテイメントとしてはいまひとつだなあ、と。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH[*] シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。