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[コメント] フィリップ、きみを愛してる!(2009/仏)

男同士とはいえ、人が人を大切に思う気持ちに変わりはないので、そういう描写にグッとくるのは確かだが。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 交通事故で瀕死の目に会うまでゲイであることを隠してきたラッセル(ジム・キャリー)は、その直後にジミー(ロドリゴ・サントロ)と出会い、「ゲイの生活はコストがかかる」から詐欺を始めた。収監される直前までジミーと付き合っていた彼に、いつ<“AIDS患者だった”恋人の死を看取る>暇があったのか。獄中で出会った新恋人の名前はフィリップ・モリスという。有名煙草メーカーと同名だ。事情により本名を明かせないための偽名とでも思いたければ思えと言うか。おふざけでないよ。

 ラッセルが脱獄を重ねた理由は、フィリップ(ユアン・マクレガー)への純粋な愛のためだという、この映画が喧伝するストーリーを、私は買わない。この男は典型的な嘘つきであり、他人を出し抜くことをただ楽しんでいるだけだ。

 映画にとってそれが悪いわけではない。権力や、出来上がった社会勢力を痛快に笑い飛ばす犯罪映画として見るには、それで十分だ。だがその視点で見ると、「本当に実話なんだってば」(冒頭の字幕)と強調されるだけでは物足りない。犯行経緯をもっと具体的に描いてくれないと、本当にこんなんで(詐欺や脱獄が)成立したのかなあ?との疑問が残る。最も克明に描かれるのは、彼が偽弁護士を演じる裁判のシーンだけど、これも、あれでヤマ場は越えたと言えるのだろうが、そもそもどういう判例の適用を引き出したのかが、わからないと・・・。

 実際には、さほど大金の絡む詐欺に成功したことはなく、仮面元妻とも離婚後うまくいってなんかはおらず、この映画の物語こそが、彼の作り上げた最も大きなウソでは?という疑念が、どこか拭いきれない。物語はよく刈り込んであって面白いのだけど、作り手側が物語自体の面白さに溺れてしまい、細心に払われるべき配慮まで刈り込んでしまったように思えなくもない(実話ならね)。

 ラッセルは今もテキサス州の刑務所に服役中という。下司の心配を吹き飛ばすべく、ぜひまた出てきてほしいものである。

75/100(10/07/05記)

(評価:★3)

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