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[コメント] サンクタム(2010/米)

暗くて狭くて怖い映画。地味だが、息苦しさの中にキャラクターが丁寧に書き込まれ、その成り立ちをあれこれ思い巡らす楽しみはある。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 地底の洞窟探検をしていると、こういうシチュエーションに襲われ得るのだなと、もちろんまったく事前に想像はつかないが、でもあり得るだろうなと思える。リアリティ、という言葉しか思いつかないが、その辺、製作陣にいる体験者(キャメロンウェイト)ならではのリアリティが凄い。

 その上で、本来はどちらかと言えば、そういう数々のシチュエーションを繋いで描くために用意された、としか思えないようなドラマ部分に、はっきり言えば見応えがある。

 主人公(親父の方)は、どう見ても、グループのリーダーとして同行した仲間たちの命をどんな場合でも最優先する、というよりは、誰もたどり着いたことのない場所、誰も見たことのない景色を見たいというような、名誉欲というのか冒険欲みたいなものにとりつかれており、そのために仲間の命を犠牲にすることを厭わない。選択肢としてはギリギリの場面と描かれているけれど、そういう場面に陥ることのないよう仲間の命を優先する、ということはなく、常に仲間を殺して前に進んで行く。力の強い者が生きるという非情な倫理の中に身を置いていることも明らかだ。

 その点において、観念的なキャラクターなのかとも思う。だが少なくとも観念の世界においては、成立するキャラクターだとも思った。洞窟探検者たちが魅力を感じる世界においては、こういうキャラクターが理想像として成立するのかもしれない。

 僕自身は、ここまで暗くて、ここまで狭い世界は、怖いとしか思わない。だから、そもそも彼らの世界を魅力的だと思わないし、当然ながらこの人物像を倫理的に肯定できない。だが、彼らが魅力を感じる世界においては、こういう人物が理想なのかもしれないということについて、外形的には理解できると思った。

80/100(17/12/24見)

(評価:★4)

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