[コメント] 紳士は金髪〈ブロンド〉がお好き(1953/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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当時まだそれほど売れてなかったマリリン・モンローに対し、ジェーン・ラッセルはセクシー女優としてすでに有名で、映画の中でもラッセルの方が格上にクレジットされている。
映画の中では息のぴったり合っている様に見える二人だが、この映画でマリリンが大ブレイクしたのを快く思わなかったラッセル(ブルネット)は、後に『紳士はブルネットと結婚する』という作品を作らせ、主演した、という今から振りかえると微笑ましいようなエピソードも。
◇◇◇以下08/01/15追記◇◇◇
(1)「彼女は馬鹿なのよ。顔のいい男に惚れてしまうの。顔がいいだけではお金があるかないかわからないのに。ポーッとなってお金のことを忘れてしまうのね。だから私と親友なの。私がそばにいて少しずつ指導してあげる必要があるのね。彼女は必ずいい奥さんになる人よ」
(2)「私は自分が好きになった男なら、お金があるかないかにはこだわらないわ」「あなたは愛のない結婚生活をおくるつもりなの?」「私が? 愛のないって? ご冗談を!」「結婚生活にはお金が必要なのよ。貧乏暮らしでお金の心配ばかりしていたら、旦那さんを愛してあげる余裕なんてないでしょう?」
(3)「給仕長さん。私のテーブルに同席させてほしい人がいるのだけど」「それはできません。席決めは給仕長の専管事項ですので」「でもお金を払って頼まれたら、あなたも受け取るでしょう?」「そうとなれば話は別です」「そのお金を返さなければいけなくなるかもしれませんわよ」「どういうことです?」「以前ホテルに滞在したときのことですけれど。私、毎晩自分の部屋で夕食を取ることにしたの。そうしたら、そこの給仕長さんは多くの男性客から預かったお金を返さなければいけなくなったのよ。ディナーのときに私と同じ席に座る約束で貰ったお金なのだから当然でしょう。給仕長さん、この船旅でも私にお部屋で食事をとってほしい?」「私の負けです」
この鉄壁に一貫した論理力! 鮮やかな修辞術! こういう女性像、ないしこういう論理を造り出して描いて見せたところがこの作品の素晴らしさだと思う。都市名と地域名の違いもわからないお馬鹿さん(ティアラも知らないってありうるの?!)ながら、不思議な聡明さ(※)を併せ持つという、まさにマリリン・モンローという器に魂を吹き込んだのがこの作品なのではないだろうか。
(※)なにしろ彼女は、見た目で男を判断しない。「お金持ちである」1点さえクリアすれば、どんな男の中にも善良さと可愛らしさと誠実さを見てとって、それで信頼して一生そばに寄り添っていられる、という女なのである。ある意味では徹底的に公平で偏見に左右されないのだ。もちろん、彼女の前ではどんな男も誠実になってしまうからだし、彼女に一生寄り添ってもらう、というのはとてもコストがかかるわけだが。
ちなみに表情とか衣装の雰囲気とか含めて、私はこの作品でのマリリンが一番美しいと思うんだけど(見てないのもたくさんあります)。女神ッスよ。
85/100
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