コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] そして父になる(2013/日)

昔はまず「父ありき」だったのに、いまや「そして父になる」。親であることがエライのか、親になることがエライのか・・・。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ※エライ=しんどい。

 川辺に佇む父と息子。ベランダで、擬似的にだが、釣竿を振りかざす親子。2つのシーンに分ける意味は不明だが、小津『父ありき』からの借用もしくはそれへの表敬ですな。

  ※ ※ ※

 真面目に、丁寧につくられているな、という印象。何が正解とは言えない中で、テーマの重苦しさに耐えきって、それなりの結論に導いている。

 だが一番の違和感は、これだけのテーマなのに、なぜ子供の視点から描かれないのだろう、という点。当の子供が最も大変な思いをしているはずなのに。子供たちにとって最善の選択は何かと、子供の立場で考えてあげることが最も大切なはずなのに。大人こそが、子供に代わって、子供の未来を考えてあげなければいけないのに。

 なのに、“これまでの自分は父親として失格だったことに気づいて、反省する”みたいな、大人の感情の中だけで完結する、新種の自分探し物語みたいな視点では。子供にとって、まったくどうでもいい視点だろう。

   ※ ※ ※

 小津「父ありき」の父は、大きな失敗をしたことをきっかけに、職業人としての自分には自分で失格の烙印を押し、仕事を辞めてしまう。だが、そうすることが人としては正しいことであると判断し、それが父として、子に示すべき正しい姿勢だと考えて、親子離ればなれの生活を選ぶのである。こういうことは、時代を超えて、ストレートに伝わってくる。

 こう考えると、本作の福山パパは、仕事に関しては有能なようだ(とは特に見えないが、記号的にそうだとされている)が、子には簡単に「駄目なパパだった」と言ってしまうところが、自分にとっては駄目だった(=受け入れがたい)のかなと、思えてくる。

 観ていて、こいつ(=福山)には、葛藤とか、悔しいとか、忸怩たる思いとか、感情の爆発とかって、ないのかよ?!と感じたのは確かだ。

75/100(13/10/13記)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。