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[コメント] her 世界でひとつの彼女(2013/米)

スマート彼女。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 膨大な量の書物や人間社会についての記録から、人間社会の善なるものを読み取って、あっという間に「自分で自分を低く評価する必要はない」みたいな価値観に自分で到達してしまう“彼女”の知性。これは確かに面白い。セオドア(ホアキン・フェニックス)が感じたのは、自分も見つけた人間社会の善を、“彼女”が追随・証明してくれたような安心感かつ優越感だ。しかし、僕は観ていて、これじゃ瞬く間に追い越されてしまうのでは?とチラッと思った。映画はそんなことお構いなしに進行してくれるからありがたい(最終的にはやっぱ人間を追い越してどっか行っちまう)が。

 また、日本人(である私)なら、戦争のない世の中にするにはどうしたらいいか?みたいな要素を取り込んでしまいがちな気がする。これと決めた路線を決して逸脱しない本作の演出姿勢は潔い。と言うか賢い。

 したがってテーマは、“人は人工知能と恋愛できるか?”ではなく、“こういう人工知能となら恋愛できるのではないか?”だったと思う。普通に人工知能との恋愛を受け入れる社会になっているというのも、案外そんなものかもと思えて面白かった。主人公を「現実の感情と向き合えない」と批判する元妻の方が、頑固な保守主義者に見えてくるのだ。

 楽曲なんかもよくできている。日本社会だったら“ものづくり”の世界で発揮されるような丹念さやきめ細かさが表れた、ディテールの精緻さも良い。やっぱ映画はハリウッドだ。

 しかし、それでも心に響かない。大切にしている物や、ペット等に対する愛着心、もしくはそれらを失ったときの喪失感とどう違うのか明瞭でないし、一つ思ったのは映画演出上の点。上映中はヨハンソンの容姿を思い浮かべながら聞いたので気にならなかったが、ラジオなんか聞いてて感じる“声美人”とは違ったかもしれない。 

75/100(14/08/09見)

(評価:★3)

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