[コメント] 秋立ちぬ(1960/日)
子供に対して残酷なまでに冷淡だが、<これは、僕たちの社会が子供に対して実際に行なっていることである>という可能性、の提示だろう。
これを見て、大人が無責任に描かれすぎる、と言った者がいる。親は子をほったらかして愛人と駆け落ちし、従兄は約束をたがえて近くの林に連れてってくれるだけ、タクシーの運ちゃんは港湾部の埋め立て地帯に子供を置き去りにして帰ってしまうからだ。だが子供の純粋で厳しい目から見たら、無責任の非難を免れる大人はいないのではないか。少なくとも成瀬的映画世界の住人は、子供から見たらいつもこの程度の冷淡な行動を取るものばかりだろう。微温的な下町情緒やお茶の間ホームドラマのイメージで成瀬を見たらひっくり返る。重要なのは、子供は結局のところ、この「大人の無責任」を受け入れざるを得ないということである。これは、昔をほのぼの懐かしむよすがとするような映画ではない。人生の苦々しさに舌打ちしながら見る映画である。こんなに人生のむなしさを感じさせる映画はほかにない。
80/100(07/05/21記)
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