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[コメント] 柳生一族の陰謀(1978/日)

悪事は露見する。
G31

「悪事は露見する」と言うが、この映画の「悪事」は露見しない。露見はしないのだが、でもこのくらいの悪事はあっただろう、という描き方である。実際、徳川の天下は、何万、何十万という人間の死の上にあったことは事実だ。権力を掌握する、あるいは、権力に登り詰めると言ってもいいのかもしれないが、そのこと自体に、何かとてつもなくドス黒いものが潜んでいるという実感がある。その実感を映画にするのに、耐えうるだけの構成の確かさ、重厚さを、この作品は持っていたと思う。そしてこの重厚さを支えたのは、家光・松方弘樹の見せた純粋さであり、忠長・西郷輝彦の見せた精悍さであり、柳生但馬守・萬屋錦之介の見せた貫禄であった。もちろん、その他の多数の役者、映像スタッフ、その他スタッフの力も大きい。

その意味で、そうは言っても権力のもたらす平穏・安寧、別の表現で言うなら“そのまま戦乱が続いていたら、もっと何万、何十万の命が失われたろう”、あるいは自分の内にもそういうドス黒さが存在するという自覚、そこまで描かれていたら、より私好みだったろう。

だがこれは無い物ねだりだ。

本作は、本作の目指すテーマと、それを支えるドラマの土台が、噛み合った作品だったと思う。見応えある映画だった。

80/100(13/03/17見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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